カンパ・フルクラム フリーボディベアリングの圧入不良

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カンパ系のフリーボディで使われているシールドベアリングの圧入不良があるのをご存じでしょうか?

フリーボディにはシールドベアリングが2つ使われています。

シールドベアリングは、圧入によって組み立てられていますが、そのやり方によっては大きな回転抵抗のあるホイールがあります。

経験上、かなりの確率で回転不良があり、本人は全く気が付いていない場合がほとんどです。

フリーボディの回転は、ホイールに組んである状態では気がつきにくい部分なので、多くの方が気がつかないんだと思います。

ぜひ、この記事を読んであなたのフリーボディのベアリングを点検してみてください。

修正方法もあるので最後まで読んでください。

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フリーボディベアリングの点検の仕方

フリーボディのベアリングは、ハブベアリングと一緒に回転しているので、ハブを回転させたときにゴリゴリとした感触が伝わってきます。

その時のゴリゴリとした感触が、ハブベアリングなのか?フリーボディのベアリングなのか?という判断は、フリーボディを外さないとわかりません。

フリーボディのベアリングを単体で点検し、フリーに異常が無ければハブ側のベアリングがゴリゴリしていることになります。

フリーボディを外すのはむずかしいでしょ

フリーボディを取り外すのは非常に簡単です。

ハブを分解した時のような玉アタリ調整も必要ありません。

カンパ・フルクラムのフリーボディの取り外し方

使用工具

  • 5㎜の六角レンチ
  • 17㎜のスパナまたはメガネレンチ(モンキーレンチでも可)

フリーボディにカセットギヤがついていたら取り外しておいてください。

センターシャフトに5㎜の六角レンチを入れて、シャフトの回転を固定します。

フリーボディを固定している17㎜のナットをスパナで取り外し、ナットの下に入っているカラーも抜き取ります。

この17㎜のナットは逆ねじになっているので、右に回すとゆるみます。

正ねじだと勘違いしないようにしてください。

ナットが外れれば、フリーハブを抜く準備ができました。

あとはフリーを引っぱれば、シャフトから抜くことができます。

硬くて抜けないときは、左右に少し回すと抜けます。

フリーボディベアリングを正しい位置にする

正しく入れられたベアリング
正しく入れられたベアリング(図1)

フリーボディが外れたら、ベアリングの状態を確認してください。

回転がキツくてゴリゴリしているようなら、ベアリングの圧入不良です。

ベアリングを正しい位置にすれば、見違えるように回転が軽くなります。

まず、フリーボディの内部でベアリングがどのように入っているのかを理解しておきましょう。

フリーボディの中には3つの部品が入っています。

  1. シールドベアリング × 2
  2. ベアリングカラー

ベアリングが2つと、シャフトの締め付け圧をベアリングに与えないためのカラーが入っています。

フリーボディの外側から、(1)シールドベアリング・(2)カラー(パイプ)・(3)シールドベアリングの順番で組付けてあります。

ゴリゴリする原因は、外側のシールドベアリングを入れすぎているからです。(圧入不良)

ベアリングを入れすぎているために、下の図のようにひずんだ状態でフリーボディに入っています。

入れすぎたベアリング(図2)

ベアリングに挟まれているカラー(パイプ)の役目をまずは説明しておきます。

フリーボディは17㎜のナットで固定されていましたよね。

フリーボディを固定しているナットは逆ねじ
フリーボディを固定しているナットは逆ねじ

ナットを強く締めつけると、ベアリングのインナーレースをハブ側に強く押しつけることになります。

インナーレースに圧が強くかかると、ベアリングに余計な力がかかって回転不良になってしまうので、この締め付け圧をフリーの中に入れてあるカラーで受け止めます。

ナットで締め付けられた力は、外側のインナーレース → カラー(パイプ) → 内側のベアリングのインナーレースとなって、ベアリングの鋼球には締め付け圧の影響はありません。。

また、カラーが無いとナットで締め付けたときに、ベアリングがハブボディの中に入ってしまうのも防いでいます。

メーカーが組み付けるとき、おそらくプレスを使ってベアリングを圧入していると思います。

その時に、外側にあるベアリングをプレスで位置を確認せずに圧入すると、アウターレースとインナーレースの位置が微妙にズレます。(図2)

このズレを直すのが今回の作業です。

外側のベアリングを抜く方向に動かす

フリーボディの回転不良は、外側のベアリングが入りすぎていることが原因です。

なので、いったん外側のベアリングを抜く方向に動かして、正しい位置に入れなおします。

あなたが取り外したフリーボディの中に入っているカラーは軽く動くでしょうか?

回転不良の場合、このカラーがベアリングで強く押さえつけられて動きません。

カラーが軽く動くのにゴリゴリしているのなら、ベアリングそのものがダメになっているので交換が必要です。

まずは、この動かないカラーをフリーボディの中で横方向にズラす作業をします。

ドライバーなどをカラーにあてて、ベアリングを支点にしてコジって少し動かしてください。

カラーをズラして外側のベアリングを内側から叩く
カラーをズラして外側のベアリングを内側から叩く

内側(ラチェット側)から外側のベアリングのインナーレースに、マイナスドライバーがあたればOKです。

画像の親指のあたりのベアリングを内側から叩きます。

内側(ラチェット側)からインナーレースにマイナスドライバーをあて、ハンマーで軽く叩けばベアリングは外側に少し動きます。

強く圧入されていないので、軽く叩けばすぐに動くはずです。

べリングのインナーレースは叩いてはいけない部分なのですが、圧入しすぎて歪んだ状態で使っていれば最終的にはベアリングがダメになってしまいます。

12時・3時・6時・9時の位置を均等に軽くたたけば、ベアリングは外側に動くはずです。

ベアリングがわずかに動けば、カラーがフリーボディの中で自由に動くようになります。

この状態では正しい位置ではないので、外側に動かしたベアリングを正しい位置に入れなおします。

使用するのは

  • ハンマー
  • 19㎜くらいのソケットまたはパイプ

ベアリングを入れるためには、アウターレースと同じか少し小さいパイプが必要です。

19㎜くらいのソケットがちょうどいいと思います。

ソケットをベアリングのアウターレースにあてて、軽くたたいてフリーボディの正しい位置に入れましょう。

正しい位置は?

カラーが動かないのは入れすぎですし、動かすのに力が必要なのも入れすぎです。

ではどのくらいがベストかと言うと、カラーを動かすとインナーレースに軽く触れている状態がベストの位置です。

指でカラーを動かしたときに、2つのベアリングのインナーレースに少し擦れてるくらいがベストです。

かすかにベアリングに擦れるくらいがちょうどいい
かすかにベアリングに擦れるくらいがちょうどいい

カラーが、ベアリングのインナーレースに触れる感覚がない場合や、きつすぎて動かない場合は、「入っていない」または「入りすぎ」の状態です。

少し叩いて入れたらカラーを動かして確認しながら、ゆっくり少しずつ入れていきましょう。

カラーが軽く当たるくらいでいいんだね。

フリーラチェットのグリスアップ

フリーを外したついでにラチェット部分のグリスアップもしたいですよね。

グリスの量でラチェットの音を調整することができるので、あなたの好みの音をぜひ見つけてください。

ラチェット部分に使うグリスは「シマノ フリーグリス」を使います。

絶対に粘度の高いグリスを使ってはダメです。

グリスが硬いと、ラチェットの爪が張りついてしまって、フリーが空転する原因になります。

フリーの音が大きいほうが好みという方は、フリーグリスを爪の部分だけに使ってください。

フリーは静かな方がいいという方は、爪の部分に加えハブ側のギヤ部分にもフリーグリスを塗ります。

フリーの音は、爪がハブのギヤを叩くことで出る音なので、ギヤにグリスがあれば音は静かになります。

グリスが少ないのが好みの場合は、注油の頻度を増やすようにしてください。

爪の動きが悪い時は,爪を押さえてるスプリングを交換すると直ります。

意外と歪んでたりするので、ついでに交換したほうがいいかもしれませんね。

フリーボディを組み付けるポイント

フリーボディは外した時の逆の手順で組めばいいのですが、ラチェットの爪が邪魔をして入りません。

フリーをハブに押し付けたまま左方向に回転させると、爪が動いて「スコッ」っと入ることもあるのでやってみてください。

それでも入らない場合は、フリーの爪を小さなマイナスドライバーなどで押さえてやれば入ります。

フリーをハブに押し付けながら3カ所の爪を押し込んでください。

フリーハブの組付け

フリーをハブに入れることができたら、スペーサーカラーを入れ17㎜のナットを締めて完成です。

ナットは逆ネジなので左に回すと締まります。

締め付けは軽く締まっていれば十分です。

ナットはエンドナットも兼ねているので、自転車についている間は緩むことはないからです。

軽く「キュッ」っと締めてください。

最後にフリーを軸方向に動かして、ガタが無いことを確認すれば完成です。

なぜ圧入しすぎている個体が多いのか

圧入不良は構造を理解してないとやってしまう初歩的なミスです。

カンパ系のフリーボディの2つのベアリングは、いずれも外側から入れます。

ラチェット側のベアリングもフリーハブの外側から入れる構造です。

外側のベアリング位置はカラーが無ければ、ラチェット側のベアリングのところまで入れることができてしまいます。

つまり、正しい位置はカラーの長さで決まるということです。

あくまでも想像でしかないのですが、組付け作業をしている方は、ベアリング位置を「カラーとのスキマを考えながら組んでいないんじゃないかな?」と思います。

外側のベアリングの圧入は「止まるまで」といった感覚で作業しているのではないかと。(内側のベアリング位置は止まるまでです)

ベアリングを圧入するときは、必ずアウターレース(ベアリングの外側)に圧力をかけるので、「止まるまで」といった力加減が強すぎると、圧入しすぎてベアリングがひずんだ状態になり、ゴリゴリしてしまうという流れなんだと思います。

作業する人は、カラーの役目などが理解できていないのかもしれませんね。

作業する人のスキルによるものかもしれませんし、いずれにしてもベアリングを入れすぎている個体が多いのも事実です。

そうは言っても、製品は点検をして出荷しているはずですよね。

もしかすると、新品ベアリングは入れすぎてもゴリゴリしないのでわからないのかもしれませんね。

カンパやフルクラムはフリー交換でコンポの変更が可能

カンパやフルクラムは、フリーボディを交換することでシマノやカンパに対応することができます。

シマノ用のフリーハブをカンパ用に交換すれば、カンパニョーロコンポで同じホイールを使うことができます。(逆ももちろんOK )

中古ホイールは、同じホイールでもカンパフリーがついているものは安い傾向にあります。

フリーを交換すれば、シマノとして使えるのでフリーの価格と比較してシマノ用を購入するより安くなる場合もあります。

フリーボディのベアリングのまとめ

カンパ・フルクラムのフリーボディの圧入不良を改善する方法を記事にしました。

フリーベアリングの圧入不良は大きな回転抵抗になるだけではなく、ベアリングの寿命も短くしてしまいます。

カンパ系のホイールでは多くの組付け不良を見ています。

また、カンパ系のフリーの取り付けナットは、新品時にきちんと締っていないものもかなりあります。

確認したことがない方は、手でナットを右に回してみてください。

ゆるんでませんか?

カンパ系のフリーボディは、点検調整することで耐久性を上げ本来の性能を発揮することができます。

ぜひ一度点検してみてください。

「自分のはCULTだから回転が軽い」と思っていても、実はフリーハブボディで回転抵抗があるかもしれません。

そんな状態では、CULT本来の性能が発揮できていないことになりますよね。

この記事を参考に調整してみてください。

調整後はスムーズな回転を必ず体感できるはずです。


コメント

  1. 大変参考になりました。
    ZONDA のグリスアップをしたとき、フリーボディのベアリングが、内側、外側ともにゴリ感があることに気づきました。(予備のフリーボディもあり、そちらは問題なし。)
    交換しようと考えましたが、こちらを参考にメンテしてみたいと思います。

    • コメントありがとうございます。
      ベアリングの間にあるカラーの動きに注意して外側のベアリングの位置を決めるようにしてください。

  2. フリーボディのベアリングをこちらの手順通りにメンテしたところゴリ感が解消されました。
    ベアリングに若干サビが出始めていますが、回転がスムーズなのでもうしばらく使えそうです。

    フリーボディも高くなったので、延命できて助かりました。

    ちなみにフリーボディはアルミのものとスチールのものを持っていますが、手持ち物ではスチールのものが圧入不良でした。

    • お役に立ててよかったです。
      フリーボディのベアリングは規格ものなので国産ベアリングと交換することも可能です。
      交換を繰り返すと、圧入がゆるくなるので注意が必要です。
      メンテしながら大切に使うこともロードバイクの楽しみですね。