車高を下げたいけど、ダブルウィッシュボーンで「ショックが車から外せない」なんて相談されることがあります。
国産のサスペンション交換のなかで、作業がやりにくいものがダブルウイッシュボーンです。
ダブルウィッシュボーンはストラット式と違い、アッパーアームがジャマでサスペンションを簡単に車から抜くことができません。
慣れればどうってことはないですが、ストラット式と比べると圧倒的にやりにくいです
作業のコツはアッパーアームを切り離すことと、ロアアームを下げること。
ダブルウイッシュボーンのサスペンションの取り外し方から、足回りのメンテナンスの最後でやらなければならない【1Gでの締め付け】まで解説します。
この記事を読めばダブルウイッシュボーンのサス交換や1Gでの締め付け方法が理解できます。
ダブルウイッシュボーンはアッパーアームのボールジョイントがポイント!
ダブルウィッシュボーンはアッパーアームの中にショックアブソーバーが入った構造になっています。
ショックを外すことは難しくないのですが、それだけではアッパーアームの中に入ったショックを抜くことができません。
どうやって抜くかというと、アッパーアームのボールジョイントを外せばショックを抜くことができます。
アッパーアームの車体側のボルトを抜いてもできます。
車体側のボルトを外して、アッパーアームをフリーにするとショックを抜くこと自体はボールジョイントを外すより簡単です。
しかし、ロードスターの場合、車体側のボルトを抜く作業は意外と大変なので、ボールジョイントを外す方法をおすすめします。
アッパーアームをボディから外した場合、1Gでの締め付けがすごくやりにくくなります。
ボールジョイントの外し方
ボールジョイントはナットを外しただけでは外すことができません。
ボールジョイントはテーパーになっているので、ナットを締めると圧入されてしまうためです。
取り外すためには『ボールジョイントプーラー』を使いますが、ハンマーがあれば外すことができます。
ボールジョイントは専用工具(ボールジョイントプーラー)を使うか、今回の方法以外での作業は厳禁です。
たまに、ボールジョイントのネジ部分を叩いて抜く方がいますが、ネジを傷めるのでやってはダメです。
ボールジョイントプーラーなんて持ってない方がほとんどですよね。
整備を仕事としていれば持っているでしょうが、一般の方は持ってないはずです。
そんな時はハンマーを使えば外すことができます。
まず、ボールジョイントのナットをゆるめます。
ナットは緩めるだけで外してはダメです。
ナットをネジの頭が隠れるくらい緩めたら、ハンマーでナックル側をぶっ叩きます。
その時に、ナックルではなくボールジョイントのボルトを叩いてしまうことがあります。
以外と叩きにくい場所なので、私もはじめのころはうまく叩けませんでした。
ネジを叩いてしまうんですよね。
ナットを外さないのはそのためです。
ネジ山を叩くと、つぶれてしまってアッパーアームを取り付けることができずに交換することになります。
ナットがついていれば、たとえ叩いてもナット交換でOKです。
ボールジョイントのナックル部分は少し奥まっているので、叩きにくいです。
その場合は『当てハンマー』という技術を使います。
叩きたい場所に小さなハンマーをあてて、そのハンマーを別のハンマーで叩きます。
ナックルを直接叩かないので、ナックルに傷がつくことも防げます。
当てハンマーを叩くハンマーは、片手で持てるだけの大きさのものが力がいらないので楽です。
アルミアームを使っている車両はボールジョイントプーラーを使用する
アルミのナックルを使っている車は絶対に叩いてはいけません。
アルミは柔らかいので叩くと変形してしまいます。
アルミの場合は、必ずボールジョイントプーラーを使うようにしてください。
ボールジョイントプーラーは2千円くらいの安いものもありますが、このKTCのプーラーがおすすめです。
私も使っていますが、大きな力がいらないので非常に楽に作業できます。
ロアアームを下げるためにスタビリンクを取り外す
ダブルウイッシュボーンはアッパーアームを外し、ロアアームを下げる必要があります。
ロアアームにはスタビライザーがついているので、スタビライザーのリンクを外しておきましょう。
スタビライザーが効いていると、ロアアームを下げるのにかなり苦労することになります。
サスの取り外し方
アッパーアームのボールジョイントとロアアームのスタビリンクを外したらいよいよショックアブソーバーを抜くことができます。
サスペンションのアッパーマウントと、ロアアームの取付ボルトを取り外します。
ストラット式だとこれだけでサスペンションが外れますが、ダブルウイッシュボーンはアッパーアームから抜かないと車両から取り外すことができません。
そこで、片手でサスペンションを持って、もう片方の手でアッパーアームを下げます。
さらに足を使ってロアアームを下げると、ショックアブソーバーの上部分に空間ができるのでアッパーアームから抜けます。
3つの動作を一人でやるので足を使いますが、補助をしてくれる人がいればロアアームを担当してもらうと楽に作業ができます。
ロアアームを下げると、ブレーキホースや、車によってはABSの配線に余裕がないことがあります。
ハンドルをブレーキホースに余裕ができる方向に切っておいたり、ABSの配線を取り外すなどしておきましょう。
足まわり整備の仕上げは1Gで締め付ける
ショックアブソーバーの下側にはゴムブッシュがついています。
ジャッキアップした状態で締め付けて、ジャッキを外して車をおろすとブッシュがねじれてしまいます。
車を動かして足回りが動けば、ブッシュはさらにねじれることになります。
ブッシュがねじれて切れたり、劣化を早めてしまうので必ず1Gで締める必要があります。
車が着地して静止している状態でブッシュが全くねじれてない状態を1Gと言います。
車の重さをささえている状態です。
ジャッキアップしていては1Gで締めることはできません。
ではどうすればいいのでしょう?
とりあえず足回りはすべて仮組しておきます。
車の重さをアーム類で支えている状態を作り出せばいいので、リジットラックを使ってジャッキアップした状態で1Gを再現します。
リジッドラックをロアアームの外側にかけて、ジャッキをおろします。
すると、ロアアームには車の重量がかかってサスペンションが縮むはずです。
仮組している状態なので、ブッシュはねじれていません。
この状態で各部を締め付ければ、ブッシュがねじれていない状態で締め付けることができます。
ここで注意することは、車を持ち上げているジャッキは外さないようにしてください。
ロアアームにリジッドラックをかけるのは非常に不安定です。
リジッドラックが外れて車が落ちてしまう可能性があるので、ジャッキは車と少し隙間があるくらいにして万が一に備えておきましょう。
確実に1Gにするにはタイヤをつけて地面におろした状態が正しいのですが、テーブル式のリフトではない限り無理なので、リジッドラックを使った方法で作業しましょう。
リジッドラックは整備の必需品
自動車の整備でリジッドラックは欠かせません。
私はリフトを使っていますが、リジッドラックは8個持っています。
オイル交換をする場合は、ジャッキアップして車の下にもぐりますよね。
危ないので必ずリジッドラックを使うようにしてください。
リフトには安全装置があって、たとえ油圧が抜けても車が下がってくることはありませんが、ジャッキは安全装置がないので油圧が抜けると車は降りてしまいます。
オイルシールが抜けると、イッキに車が降りるので逃げる暇はありません。
また、リフトでは指定された場所で上げていれば車が落ちることはないですが、ジャッキの場合は力を入れるような整備をすると外れて落ちることがあります。
車の下にもぐって作業してジャッキが外れ、車が落ちて挟まれて亡くなるという事故は意外と多くあります。
プロでも油断するとやってしまう事故なんです。
リジッドラックを使っていれば防げます。
自動車は重くても2tくらいなので、下のリンクのような安いもので十分です。
私が使っているものもこれと同じものです。
まとめ
ダブルウイッシュボーンのショックアブソーバーを取り外すためにはアッパーアームを取り外すことがポイントです。
アッパーアームはボールジョイントを外すことでショックアブソーバーが抜けやすくなります。
足回りにはゴムブッシュが使われているので、車は着地した状態でゴムブッシュはねじれていない状態でなければなりません。
そのために、リジッドラックを地面に見立てて、ロアアームで車をささえます。
そのままでは不安定なので、万が一のためにジャッキを車の下に入れておきましょう。
サス交換は、見よう見まねで出来る作業ですが、リジッドラックを使って安全に作業してください。
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