ドラムブレーキのメリットとデメリット なぜ今だにドラムブレーキなのか?

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多くの乗り物のブレーキはディスクブレーキになっています。
50年くらい前までは、ドラムブレーキが主流でディスクブレーキは一部の高級車だけの特別な制動装置でした。

当時は特別だったディスクブレーキが今では自転車から飛行機までディスクブレーキになっています。

ディスクブレーキの方が優れたブレーキだと思っておられる方も多いでしょう。
もちろんディスクブレーキが優れたブレーキなのは間違いありません。
しかし、いまだにドラムブレーキが存在し、自動車で使われているのはなぜか?

ドラムブレーキにもメリットがあるからですよね。
ドラムブレーキのメリットとデメリットを解説します。

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ドラムブレーキの最大のメリットは制動力にある

ディスクブレーキが主流になって、ドラムブレーキのイメージはどうでしょう?

  • ディスクブレーキに比べて制動力が弱い
  • 放熱性が悪い
  • 重い
  • メンテナンスがしにくい

イメージとしてはこういったものかと思いますが、制動力に関しては全くの間違いです。

ディスクブレーキと比較してドラムブレーキの制動力が強いのは間違いありません。

そのほかの「放熱性が悪い」「重い」「メンテナンスがしにくい」というのはドラムブレーキのデメリットです。

ドラムブレーキのほうが制動力が高い理由

右側のドラムブレーキ内部
右側のドラムブレーキ内部

ディスクブレーキと比較してドラムブレーキは制動力が高いです。
それは、摩材であるブレーキライニングの接触面積にあります。

ディスクブレーキのブレーキパッドと比較して、ドラムブレーキのブレーキシューは摩材の接触面積が大きく違います。

ドラムブレーキはかなり多くの接触面積によって制動力を得ています。

一方のディスクブレーキは、ディスクローターに対してわずかなディスクパッドの接触面積でしかないのでドラムブレーキほど多くはありません。

ただ、ディスクブレーキの場合はローター径を変えて、ブレーキ自体の容量を大きくすることによって強い制動力を得ています。
小型で強い制動力を得ることができるのはドラムブレーキです。

自己倍力作用というものがドラムブレーキにはある

自己倍力作用が働くリーディング側
自己倍力作用が働くリーディング側

ドラムブレーキはその特性として【自己倍力作用】があります。
ブレーキによって制動力を上げる力が働きます。

自動車のブレーキには【マスターバック】という倍力装置があります。
これによって、小さな力でも大きな力に増幅して制動力を得ることができます。

ディスクブレーキは制動力が小さいので、このマスターバックがないと力いっぱいブレーキペダルを踏んでも思うような制動力を得ることはできません。
つまり、マスターバックの普及がディスクブレーキへの移行につながったと言えます。

マスターバックが装備される前は、ドラムブレーキがメインでした。
それは、ドラムブレーキ自体に自己倍力作用があるからです。
ドラムブレーキは、ブレーキをかけると制動する力でブレーキシューを回転方向に密着させる力が働きます。

この自己倍力作用がおこるのは、進行方向に対して前側(リーディング側)のシューに対して作用します。

マスターバックによって、ブレーキを踏む力を倍増させなくても、ブレーキシューが自然と密着する力を利用して制動力を上げていたのが当時のドラムブレーキです。

ドラムブレーキの最大のデメリットは自己倍力作用にある

ドラムブレーキの最大のメリットは自己倍力作用です。
実はデメリットの一つも自己倍力作用です。

ドラムブレーキはその機構がすべて包まれた内部構造なので放熱性が悪いのも大きなデメリットです。

しかし、ドラムブレーキ車両は制動力が強すぎてブレーキのコントロールが非常に難しくなります。

ディスクブレーキはブレーキペダルを踏んだ分だけ制動力が立ち上がります。

しかし、ドラムブレーキはブレーキペダルを踏んでも「自己倍力作用がどの程度の強さでかかるのか」はドライバーにはわかりづらいです。
つまり、ドライバーが求める制動力以上の制動力が急に立ち上がってきます。

ス~~~っと止まりたいのに倍力作用によって【ギュ~~~ッ】って言う制動力になります。

この制動力の立ち上がりの早さが大きなデメリットになっています。

ブレーキ単体での倍力作用を利用したディスクブレーキとの組み合わせ

ドラムブレーキは自己倍力作用があるので、単体での制動力があります。

これを利用したのが後輪で使うことと共に【サイドブレーキ】として使うことです。

サイドブレーキの多くはドラムブレーキになっています。
最近ではディスクブレーキがサイドブレーキも兼ねているものもありますが、まだ多くの自動車はドラムブレーキです。

それは【自己倍力作用】があるためです。

マスターバックはエンジンがかかっている状態でのみ動作します。
サイドブレーキはエンジンがかかっていない停止状態で強い制動力が求められるのでドラムブレーキが適しています。

これが後輪にドラムブレーキが多く採用されている理由です。

ドラムブレーキは見えない

ドラムブレーキはディスクブレーキと違って、ブレーキの構造が見えません。

ディスクブレーキであれば、摩材であるディスクパッドの残量などの点検はホイールを外せばできますが、ドラムブレーキではできません。

日常点検で出来ないのが困った部分なのですが、後輪につかわれているドラムブレーキの摩材(ブレーキライニング)はほとんど減りません。
ほとんどの乗用車の場合、10万㌔は無交換で使い続けることができます。

また、交換する場合はリーディング側のみの交換で終わる場合がほとんどです。
トレーリング側も減りますがリーディング側に比べると1/2程度なので、リーディング側を2回交換するとトレーリング側は一回という感じですね。

ディスクブレーキに比べると構造が複雑なので工賃は高めですが、走行距離で考えたらライニング交換のコスパは良いと思います。

ドラムブレーキの点検のポイント

オイル漏れの点検
オイル漏れトラブルは意外と多い

摩材であるブレーキライニングの残量はもちろんですが、故障で一番多いのがオイル漏れになります。

画像のように、ホイールシリンダーのブーツを少しめくって点検します。
めくるとオイルが出てくることがあるのですが、その場合はオイル漏れが起きていることになります。

オイルが漏れてブレーキライニングにつくと、制動力が得られなくなるので危険です。
車検ではこの点もきちんとメカが点検しています。

もし、ブレーキをかけたときに後輪からキーキーというような音が出るようであればオイル漏れの可能性があるので点検するようにしてください。

まとめ

50年以上も前のブレーキ装置であるドラムブレーキがいまだに使われているのは【自己倍力作用】による制動力にあります。

エンジンがかかっていない停止時でも、ブレーキ本体の作用による制動力の強さがサイドブレーキに適していることが後輪で使われている理由です。

メンテナンス性はディスクブレーキに比べて悪いので、車検の時にきちんと点検してもらうようにしてください。

ブレーキライニングは10万㌔は使えることが多いです。
8万㌔を過ぎたあたりで残量は点検すれば十分だと思います。

いずれにしても、外からは見えない構造なので、車検時にはしっかりと点検してもらうようにしてください。

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