あなたにもできる! きっとできる!
ハブのオーバーホールを伝授しますっ!
誰でもはじめは初心者。
やってみることでスキルが上がります。
カップ&コーンベアリングのハブのオーバーホール手順をご紹介します。
動画も用意していますので、記事内容とあわせて見ていただければ理解できると思います。
カップ&コーンベアリングをシマノが採用する理由
カップ&コーンタイプ・ベアリングシステムは負荷に対してダイレクトに応力が働くのに対し、工業型ベアリングでは、その接触ポイントから、負荷の方向に応力が働きにくくなっています。
またカップ&コーンタイプの方が、耐久性が高くメンテナンス性が良いなどメリットが多いです。これがシマノの全てのハブにカップ&コーンタイプを採用している理由です。
シマノより
今回作業したホイールのハブはシマノのアルテグラ WH-6800 です。
カンパ系もカップ&コーンなので、基本的なやり方は同じですが【玉当たり調整】のやり方が少し違います。
フロントホイールとリヤホイールの作業方法はほぼ同じですが、フリー側の鋼球がリテーナー式ではないという部分で違います。
ハブメンテナンスの作業で最も重要で、難しいと言われる【玉当たり調整】は感覚の部分が大きいですが、できるだけわかりやすく解説しますので最後まで読んでいただければと思います。
シマノハブでも、アルテグラとデュラエースは玉当たり調整部分がグレード以下のものとは違います。
今回はアルテグラ以上のハブでの作業となります。
ハブのオーバーホールで必要な機材
今回はシマノのハブ限定の記事なのでカンパなど他メーカーでは紹介する工具などでは対応できない場合があります。
シマノのハブではアルテグラとデュラエースはデジタルアジャストシステムが採用されているので、玉当たり調整は比較的楽に作業できます。
はじめて【玉当たり調整】をされる方はアルテグラ以上のホイールでやってみられるといいかもしれません。
- 必要な工具
- 六角レンチ(HEXレンチ)5㎜ ×2
- ピンセット
- ハブレンチ(セットものがいいです)【今回は使いません】
- パレット
- グリス(耐水性)
- パーツクリーナー
- ウエス
ハブベアリングなどの作業は必ず屋内でやってください。
ベアリングの鋼球をうっかり落としてしまうと、ほぼ確実になくしてしまいます。
鋼球は落とした瞬間に跳ねて転がるのでどこに行ったか分かりづらいです。
室内であれば、探す範囲が限られるので見つけやすいです。
また、作業は必ずパレットの上で行います。
鋼球が落ちたとしても、パレット内ですべて回収できるようにしておくことが必要です。(必ず鋼球は落とします)
オーバーホールで注意することは「鋼球を無くさない」ことです。
分解組み立てでは神経を集中してやりましょう。
フロントハブの分解オーバーホール
ハブの分解に関しては、ほぼすべてのハブにおいて共通していることがあります。
それは「ハブシャフトは右側に抜く」ということです。
シマノもカンパも必ずシャフトは右側に抜きます。
シャフトが抜ける方向がわかれば簡単だね
つまり、ゆるめるのは左側のエンドネジということです。
利き手など、ネジを緩めやすいほうの手は左側で作業しましょう。
右側は支えるだけで力を入れるのは左側というイメージで作業します。
クイックレバーは必要ないのでハブから取り外しておきます。
5㎜の六角レンチを左右に入れて、左側を緩めます。
始めて分解するときは結構な力が必要かもしれません。
今回のハブにはプラスチックカバーが左側に取り付けてあります。
ドライバーなどで起こせば簡単に外れるので外しましょう。
カバーを外すとデジタルアジャストのロックカバーがついているので手で引き抜いてください。
デジタルアジャストのカバーが外れたら玉押しがあるので左に回せば外れます。
玉押しを外せばシャフトは右側に抜けます。
シャフトを抜くときにはゆっくりと、パレットの上で作業してください。
リテーナー式でない場合、ここで鋼球がバラバラと落ちてきます。
ゆっくりシャフトを抜きながら、リテーナー式なのか内部を見て判断してください。
シャフトが抜ければ次はリテーナーを取り出します。
ダストシールは、マイナスドライバーを隙間から入れて軽く起こせば外れます。
ダストシールが入っていた深さと向きを確認しておいてください。
ダストシールが外れればリテーナーを取り出すことができます。
オーバーホールでは洗浄が最も大切な作業
パレットの上にすべてパーツを出したら洗浄します。
パーツクリーナーで洗います。
ダストシールなどのゴム製品はパーツクリーナーでは材質を傷めてしまう可能性があるので、できるだけウエスでふき取るようようにしてください。
砂や泥や古いグリスはすべて落とします。
リテーナーベアリングから鋼球を抜くには、内側から爪で押し出せば外れます。
ただし、無くさないように注意しましょう。
リテーナーについたままでもクリーナーで洗えるので不安であればそのまま洗ってください。
鋼球をパーツクリーナーで洗うと、スプレーの噴射で鋼球が吹き飛ぶことがあります。
茶こしを使って、真上からパーツクリーナーを吹き付けることで洗いやすくなります。
玉押し、ハブ側にある玉受け、シャフトなどについた古いグリスはすべて落としてきれいにします。
すべてのパーツがきれいになったら、ウエスの上に並べて組み付けます。
充填するグリスの量は少し多めに
グリスの適量がなかなかわかりづらいと思います。
レースに使うのでなければ少し多めでかまいません。
リテーナーがグリスに埋まるほどは必要ないですが、鋼球の間から少し出るくらいがいいと思います。
オーバーホールの頻度を上げれるようであれば、少なめにして回転を軽くします。
玉受けにグリスを塗ったらリテーナーにもグリスを塗ります。
この状態で、玉押しを当てて回しましょう。
グリスが馴染んで、量を判断できます。
グリスの量が適量であればダストシールをはめ込みます。
指で押さえれば軽く入るはずです。叩きこむようなことはありません。
グリスアップはここまで。
つぎはいよいよ玉当たり調整です。
最も神経を使う【ハブの玉当たり調整】
玉当たり調整は簡単なコツさえわかればできるはずです。
わかりやすく解説します。
シャフトはハブの右側から入れます。
ハブの左右はハブ胴に書かれた文字が乗車状態で読める方向で言う左右となります。
ハブシャフトを挿入したら、左側から玉押しをねじ込みます。
玉押しがリテーナーに当たったところから玉当たり調整をします。
指先に神経を集中してやりますよ。
ハブの玉当たり調整は、押す力で判断する
左側から玉押しを取り付け、鋼球に当たったところからハブシャフトを下から押し上げれるように持ってください。
私は左手の人差し指でハブシャフトを下から押します。
右手は親指でハブシャフトを強く押します。
右手で強く押し、左手の力を抜くとガタがあればハブシャフトは下に動きます。
次に、左手の人差し指でハブシャフトを押し上げます。
ガタがあればシャフトは親指側に押し上げられます。
この指に感じるガタで玉当たり調整をします。
指先にコツコツと感じる感覚で、シャフトが鋼球に対してどういう当たり方をしているのかを判断するのが玉当たり調整です。
玉押しを締めすぎると、ガタはなくなりますが強く鋼球を押しているので回転は重くなります。
逆に、緩いとガタが出てしまってホイールは左右に振れることになりベアリングにダメージをあたえます。
鋼球を押す力は限りなくゼロに近い位置がベストな状態です。
ただし、感覚的にはゼロではなく鋼球をわずかに押しています。
理由は、ゼロだと使用しているとすぐにガタが出てしまうことがあるからです。
また、ベアリングというのは常に接触していないと回転が重くなるのでわずかにアタリをつけることが必要です。
ここの感覚は慣れるしかないのですが、ゼロ点からほんの少し締めてアタリをつけます。
動画でもご覧いただけますが、ホイールを少し回転させて両手で感じる回転の重さでアタリの強さを見ています。
アタリが強いかもしれないと思った時は、玉押しを緩めていったんガタを出しやり直します。
ガタがある位置から少しずつ締めて行ってガタが無くなった位置が出れば玉当たり調整ができています。
かなり時間のかかる作業なので、気長に指先に集中してやってください。
組み上げる
玉当たり調整ができたら組み上げていきましょう。
デジタルアジャストのカバーは、玉押しのロックになっています。
内側がギザギザのギヤ状になっていて、センターはハブシャフトの楕円状の穴が開いています。
ハブシャフトにはまる位置と、玉押しのギザギザの位置が合わなければ入りません。
もし入らない場合は、ギザギザの半山分だけ玉押しを締めます。
締める理由は、ゆるめる側にしてしまうとガタが出るからです。
ギザギザ半山程度であれば玉当たりがきつくても影響はありません。
デジタルアジャストのロックを入れることができれば、シャフトのエンドネジを六角レンチで締めて完成です。
あまり締めすぎないようにしてください。
新品時のようにきつく絞まっていなくてもゆるむことはない部分です。
これでフロントは完成です。
玉当たり調整は一度ではできない。何度でもやり直す
初めての時は、玉当たり調整ができないと思うことになるかもしれませんが大丈夫です。
必ずできます。
デジタルアジャストの場合、ハブのエンドナットを締めても玉当たりは変わりませんが、ハブレンチを使う場合はその都度玉当たりが変わります。
ハブレンチで締めると、玉当たりがきつくなったりゆるくなったりするので、玉当たり調整だけで1本仕上げるのに1時間かかったりもします。
イライラするときもありますし、一発で決まることもあります。
デジタルアジャストはその部分が無いので、初めて玉当たり調整をするという場合には最適なハブだと思います。
コツは押す力と抜く力で上下に押すことで指先に伝わる振動で判断します。
わからなければワザとガタを出して、指先に覚えさせてください。
まとめ
シマノのアルテグラ【WH-6800】ハブのオーバーホールを記事にさせて頂きました。
分解は誰でもできるはずですが、多くの方が「難しい」と思われているのが玉当たり調整だと思います。
玉当たり調整のコツは、シャフトの左右(上下)を押すことでガタを判断します。
感覚で作業しているので、言葉ではなかなかお伝えできませんが、指先に感じる『コツコツ』というシャフトの動きが感じられれば難しくはないと思います。
ベストな状態に近くなるほど『コツコツ』という動きが小さくなるので、どこまで自分で感じられることができるかという部分が経験値です。
シールドベアリング式のハブが増えている中で、シマノやカンパのようなカップ&コーン式はオーバーホールすれば一生使えるハブになります。
ぜひご自身で【玉当たり調整】を覚えて、長く完璧な状態のハブで自転車を楽しんでください。
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