【リヤハブメンテナンス】シマノフリーを分解 グリスアップ

記事内に広告が含まれています。

シマノハブを使ったホイールは、フリーの分解は「やってはいけない」とされています。

シマノは7800デュラの時代までは『定期的な分解』を推奨していましたが、7900デュラ以降は非分解とされています。

構造が変わっていないのにもかかわらず「分解するな」というのもおかしな話なので、私は定期的に分解してグリスアップしています。

デュラエースで言うと9000以降も分解はできるのですが、それ以前のものとは工具が違うのでやっていません。

シマノが言う『非分解』なので、自分のフリー以外の分解ももちろんやっていません。

シマノフリーの構造と、分解の手順です。

もしご自身でやってみたいという方は参考になさってください。
工具は専用工具です。

スポンサーリンク

シマノフリーはハブのOHのついでに行う作業

ハブのグリスアップついでにフリーを分解
まずはハブのオーバーホール

カンパなどはフリーにシールドベアリングを使っています。
ハブはカップ&コーンでもフリーはシールドベアリングなので、ベアリングを交換することでメンテナンスができるようになっています。

同じカップ&コーンハブでも、シマノだけはフリーに鋼球を並べたベアリング式です。

ベアリングは、内部のグリスの劣化や流れ出てしまうことによる潤滑不足が必ずおこります。
それを防ぐために定期的に分解してグリスアップをするわけですが、シマノは分解しなくてもいいとしています。

では「シマノフリーは分解しなくても壊れないのか?」というと、グリスが流れ出てしまって最終的にはベアリングが回らなくなります。

フリーの分解は、ハブベアリングの分解OHをしないとできません。
リヤハブは左右にそれぞれベアリングがあります。
フリー側のベアリングはフリーについているために、リヤハブを分解しないとフリーを外すことができないということです。

カンパの場合、フリーにシールドベアリングが2個入り、ハブはハブ単体として左右にカップ&コーン式のベアリングを使っています。(つまりベアリングは4カ所あります)

シマノハブのOHのやり方については、過去記事で解説しているので参考になさってください。

フリーを取り外す手順

6700アルテグラのフリー
6700アルテグラのフリー

フリーを取り外すのには順序があります。

フリーを単体で外してしまっては分解することがかなり難しいです。

まず、フリーのセンターの六角ボルトを取り外します。
10㎜の六角レンチで正ネジです。

このボルトは、デュラエースはアルミボルトで再使用は不可となっているので外したら交換してください。

アルテグラ以下のグレードではスチールボルトなので交換はしなくても大丈夫です。(交換推奨)

この時点ではゆるめるだけで取り外さないようにします。

フリー内部の鋼球の玉受け部分が、フリーのオーバーホールのポイントになります。

二本爪の専用工具を使ってゆるめます。
ここは逆ネジなので、右に回してゆるめます。

9000以降(アルテだと6800)は4本爪になっているので、工具の兼用はできません。

また、フリーを分解する工具は販売されていませんので私は作りました。
7800の当時は専用工具として販売されていたようですが、廃番になっていて手に入りません。
パークツールなどでもないので、やりたい方は自作しましょう。

フリー内部を逆ネジでゆるめたら、センターボルトを取り外してフリーをハブから取り外します。

フリーとハブの取り付け面にワッシャが1枚入っているので、気を付けてください。

ハブのフリー取り付け面
フリー取り付け面 ワッシャがあります

フリー内部には小さな鋼球がたくさんあるので慎重な作業が必要

シマノフリー内部構造
シマノフリー内部

フリーの玉受けはすでにゆるんでいるので、工具を使って取り外します。

この時には、必ず屋内でパレットの上ですべて作業します。

フリー内部は1㎜くらいの小さな鋼球がたくさん入っています。
落として転がってしまうと見つけることはまず不可能だと思って下さい。

玉受けを取り外すと小さな鋼球がたくさん並んでいます。
ピンセットで取り出しましょう。
何個入っているのか?も覚えておく必要があります。

上側の鋼球をすべて取り外したら、鋼球の下にワッシャ(シム)が数枚入っています。
このワッシャ(シム)で、フリーのプリロードを合わせているので薄いものと厚いものが数枚入っているはずです。

ワッシャ(シム)を外してフリーの外側をゆっくりと持ち上げると、下側の鋼球がバラバラと落ちていくのでパレットの中で回収しましょう。

フリーのセンターには、ラチェット機構の爪があります。
この構造はカンパなどでも同じです。

爪をリング状のバネスプリングで押さえて起こすという構造です。

バネスプリングを取り外せば、爪を取り外すことができます。

シマノフリーを専用グリスを使って組み立てる

鋼球やラチェットの爪など、すべてのパーツの洗浄が終われば組み立てです。

組み立てには専用のグリスを使います。

『シマノ フリーグリス』です。

非常に柔らかいグリスなので、ハブベアリングなどでは使えません。
フリー専用のグリスです。
ラチェット部分には、必ずフリーグリスを使います。
他のグリスを使うと、爪が貼りついてフリーがかからなくなります。

フリーグリスをフリーのラチェット部分に塗って爪を組み立てます。
その後、下側のベアリングの部分に少し多めにグリスを塗って鋼球を並べていきます。

下側の鋼球を並べ終わったら、フリー本体をゆっくりとかぶせましょう。
その時に斜めに入れて、せっかく並べた鋼球を落とさないように気をつけます。

つぎは上側の鋼球を並べていきます。

グリスを塗ったワッシャ(シム)をフリー内部に入れます。

ピンセットで鋼球を並べていきます。
並べ終わったら、ハブ側の玉受け部分を逆ネジで取り付けます。

フリー単体で締め付けることはできないので、手で力いっぱい締めておけば大丈夫です。
ハブに取り付けてから忘れずに締めなおします。

フリーをハブに取り付ければ完成

フリーの分解グリスアップが終わればハブに取り付けて完成です。

ハブ側は星状になっているので形状に合わせて取りつけましょう。
ワッシャが1枚入っているので忘れないようにしてください。

センターボルトを締め付けます。
指定トルクはわかりませんが、強く締めなくてもゆるむことはありません。
デュラのアルミボルトだとそもそも強く締めることはできません。

フリーを取り付けたらフリー本体の玉受け部分を専用工具で締め付けます。
逆ネジなので間違えないように。
強く締める必要もありません。
あまり強く締めてしまうと、次回の分解の時に苦労することになります。

これでフリーの分解グリスアップは完成です。
このあと、ハブのグリスを入れて組み上げていけばすべての作業が完了ということになります。

スポンサーリンク

非分解式でグリスアップをしなくてもいいのか?という疑問

構造が分かると、グリスアップの必要性が理解できると思います。

フリーグリスはものすごく柔らかいグリスなので、水ですぐに流れてしまいます。
回転部分において油切れは致命的なのは言うまでもありません。

しかしシマノは「分解するな」としているのはいったいどういうことなのでしょうか。

分解して感じるのは、誰でもできる作業ではないということです。
鋼球があまりにも小さく、鋼球を並べながら組み上げることは誰でも簡単にできるとは思えません。

難しい作業ではないのですが、構造とそれぞれのパーツの意味を理解してグリスの使い方などの工夫が必要だからです。
つまりシマノは「作業にはコツが必要だから分解せずに交換」ということにしたのではないかと思います。

デュラエース以外は高いものではないので、分解するより交換した方が早いし簡単です。
デュラはチタンフリーボディなので、かなり高価ですね。

10sホイールのフリーボディを11sのフリーボディに交換すれば10sホイールが11sになると思われるかもしれませんが不可能です。

ハブ側の取り付け形状が変えてあるので互換性は全くありません。

交換せずに長く使用する方法

ギヤオイルにフリーボディーを浸ける
ギヤオイル

フリー本体の分解グリスアップをせずに長く使う方法です。

それは、フリーをギヤオイルなどの粘度の高いオイルに浸けることです。
浸けることによって、グリス切れを起こした内部にグリスの代わりのオイルを浸透させます。

エンジンオイルよりも粘度の高いギヤオイルの方が最適です。

ハブを分解するたびに、ギヤオイルを補充すればグリス切れを起こしたものを使うよりも長く使うことができます。

粘度が高くてもギヤオイルはグリスより流れやすいので、作業の頻度は増えると思います。

まとめ

非分解式のシマノフリーの分解グリスアップの手順を紹介しました。

シマノのフリーは7900デュラエース以降のものから非分解式となっています。
しかし専用工具があれば分解は可能です。
11sと10sでは専用工具がそれぞれ必要となります。

分解には「フリーグリス」を使用します。
他のグリスは粘度が高すぎて、爪が貼りつくなどのトラブルになるので必ずフリーグリスを使うようにしてください。

このフリーグリスは、他社のフリーラチェットにも使うことができます。
フルクラムやカンパなどの爪にこのフリーグリスを使って、量を調整すると静かなフリーができるので、ラチェット音が大きいハブが嫌いな方は使ってみてください。

シマノのフリーは交換することが基本です。
調子が悪くなったら交換しましょう。

走行中にラチェットがかからなくなるなどしたら大きなケガにつながるかもしれません。

シマノフリーの内部をメンテナンスをするということはないと思います。
定期的にチェックして、定期的に交換するものとシマノはしているので非分解式としているわけです。

メンテナンス無しでいい状態を保つことは不可能です。
定期的なメンテナンスと点検で快適な状態で自転車を楽しみましょう。

コメント