公道走行できる合法のピストバイクのBB(ボトムブラケット)のメンテです。
前後ブレーキを装備してるので違法ではありません。
この自転車を組んでから一度もBBのメンテナンスをしてなかったので数年ぶりにボトムブラケットをオーバーホールしました。
固定ギヤなので乗る回数も年に数回で、一度の走行距離も40㎞程度ということもあってメンテナンス時期が伸びてしまいました。
せめて1年に一度はグリスの入れ替えをしてやりたいですね。
このタイプのボトムブラケットはスレッド式のカップ&コーンなので、分解すれば『玉当たり調整』という工程を必ずしなければなりません。
玉当たり調整は感覚がすべてなのでブログでお伝えできませんが、カップ&コーンのボトムブラケットの構造がわかっていただけると思います。
ママチャリなどはほぼすべてがこの構造なので挑戦してみたい方は参考にしてください。
玉当たり調整に関してもできるだけわかりやすく文字でお伝えできればと思います。
記事内では『ボトムブラケット』をBBと表記させていただきます。
BB(ボトムブラケット)を外す
クランクの取り外しはコッタレス抜き工具を使用します。
シマノ TL-FC10
ピストのBBはすべてコッタレスクランクです。
シマノのオクタリンク式クランク FC7710 もコッタレスクランクとなります。
BBにクランクを固定しているナットを14㎜のボックスレンチで外します。
コッタレス抜き(TL-FC10)のセンターボルトは14㎜のボックスレンチになってるので、これを使って外しこともできます。
コッタレス抜きを回すのはモンキーレンチがあればいいでしょう。
14㎜のボルトを外したらコッタレス抜き工具をクランクにセットしてセンターボルトを締めればクランクを引き抜くことができます。
左右のクランクで同じ作業をして外します。
BBのワンを取り外しましょう。
BBを分解する
BBは『右ワン』『左ワン』という部品の中にベアリングとBBシャフトという構成です。
ロードで使っているシマノのBBは、左右のカップとウォーターシーフだけなので部品点数はカップ&コーンの方が多いです。
まず左ワンから外します。
フレームにねじ込んであるカップ状のものを『ワン』といいます。
以下『右ワン』『左ワン』と表記しますね。
左ワンは玉当たりを調整するために端から端まですべてネジが切られています。
左ワンを締め付ければベアリングを強く押さえますし、緩めればベアリングの押さえつける力が小さくなります。
玉当たりでは左ワンの締め付けによってベストな玉当たりにします。
調整式のワンなので、そのままではゆるんでしまうのでロックリングが必ずあります。
ロックリングはフックレンチ(カギスパナ)を使いますがナメやすいので気を付けてください。
ロックリングをナメてしまうと叩いて外すことになるので結果的に使うことができなくなりますよ。
私はシマノの工具 を使っています。
この工具がナメにくく使いやすいです。
二本セットになっていて、反対側はヘッドスパナの32㎜になっています。
ロックリングを外したら左ワンを取り外します。
ピンスパナをかけることができるように数か所に穴が開いてます。
この穴にピンスパナをかけて回しますが、ピンスパナがなければラジオペンチを使っても回せます。
ロックリングで固定してあるだけなので、ロックリングを外せば締め付けられていないのでラジオペンチでも緩めることができるはずです。
JISBBなので左側は『右ネジ』です。
左ワンを反時計方向に回して取り外します。
続いてベアリングとシャフトを抜きましょう。
右ワンはホーザンの専用工具C-358を使う
右ワンは逆ネジです。
右に回す(時計回り)と緩みます。
JISBBは右が逆ネジ、左が正ネジです。
覚え方として私は『ペダルを踏む方向でゆるむ』と覚えています。
右ワンを外すのはできれば専用工具を使った方がいいです。
というか、専用工具じゃないと外せないと思います。
オーバーホールを時々やってるようなBBだと外せますが、かなり強く絞まっているうえに工具をかける部分が薄いのでかなり苦労すると思います。
専用工具が無い場合は36㎜のスパナを使いますが、そんな大きなスパナを持ってる方はほとんどいないでしょう。
なので、モンキーレンチを使うことが多いかと思いますが、36㎜だと300㎜のモンキーレンチでは使えません。
それ以上の大きなモンキーレンチを使うことになります。
多分そんなもの持ってないですよね。
大丈夫なので心配しないでください。
右ワンは外さなくてもグリスアップはできます。
少しだけやりにくいだけなので右ワンを外さない方法もお伝えします。
外す場合は古いグリスをすべて落としてしまいましょう。
できれば灯油などで洗ってしまう方がいいです。
BBのネジ山やフレーム内部もきれいにしてさび止め用にグリスを塗っておきます。
ネジ山は固着防止も兼ねてるので塗り忘れがないようにしてください。
右ワンのベアリングが入る部分にグリスを塗ります。
この部分のグリスでベアリングの潤滑をするので少し多めに塗ってください。
この状態で右ワンは取り付けて大丈夫です。
右ワンを外さずにグリスアップする場合
取り外すときと同じことをします。
違いは手元にワンがあるか自転車についているかの違いだけです。
左ワン側から右ワン内部が見えますよね。
指も届く距離です(68㎜)
きれいなウエスで右ワンの古いグリスをすべて拭き取ります。
外してないので少しやりにくいですが、頑張ってきれいにしましょう。
フレーム内部も指が届く範囲できれいに掃除しておきます。
サビなどがあるとさらに錆びを呼び込んでしまいます。
きれいにしたら、右ワンのベアリング部分にグリスを塗ります。
フレーム内部にもさび止めとしてグリスを塗っておきましょう。
左ワンからだとグリスを塗りにくいと思いますが、気にしなくても次の工程でグリスはたっぷりとワンに入れることができます。
ワンに入るベアリングの向きは間違えないようにしてください。
外してしまって『あれ?どっちだったっけ?』と思ったら画像を参考にしてください。
よく見ると分かりますが、逆に入れるとシャフトの方にベアリングの鋼球が当たらない状態となってしまいます。
鋼球はワンにもシャフトにも接触してないといけません。
スレッド式BBをグリスアップして組み上げる
組み付けに入ります。
シャフトには向きがあります。
スギノのシャフトには『右』と表示してありますがデュラエースはシールが貼ってあるだけなので剥がれてない場合が多いです。
シャフトには製品の刻印があるので、進行方向で読める向きで入れましょう。
上から刻印を見て読める方向の右側が『右』です。
まずは、右ワンを外せなかった方は、ベアリングにグリスを多めに塗ってください。
『多いかな?』と思うくらいで大丈夫です。
ワンには薄くしかグリスがついてないので、ベアリングを入れる時に多めに塗って入れるわけです。
ベアリングの向きを間違えないようにシャフトに通します。
その状態で右ワンにベアリングごと入れちゃいましょう。
これで右ワンは完成です。
ウオーターシーフ(プラスチックの筒)があれば入れてください。
左ワンを組みましょう。
ワンの中にグリスをたっぷりと入れておきます。
ベアリングにもグリスを塗りましょう。
向きを間違えないようにシャフトに通す、または左ワンに入れてワンを取り付けます。
ロックリングも取り付けましょう。
左ワンを取り付けたら『玉当たり調整』をして完成です。
玉当たり調整をする
最難関の玉当たり調整です。
右クランクを取り付けましょう。
クランクを取り付ける理由は、クランクを使ってBBのガタを見るためです。
シャフトだけではわからないガタをクランクをつけることではっきりと感じることができます。
ではやっていきましょう。
左ワンを適当に手で締め付けます。
左手でクランクを自分から見て外側(回転方向ではない)と内側に押したり引いたりします。
この時点でクランクにガタを感じないときは、左ワンをゆるめてください。
クランクにガタを感じるまで緩めます。
これがポイント!
ガタを感じることがとても重要です。
クランクを前後(回転方向ではない)動かしながら左ワンを締めていきます。
すると必ずガタのない状態になります。
この位置が玉当たりが出た状態です。
この位置でロックリングを締めますが、ワンが動いてしまっては意味が無くなるのでワンは動かさないようにロックリングだけ絞めるようにします。
少し技術のいる作業です。
締めましたか?
もう一度右クランクを動かしてガタを見ましょう。
ガタがありますよね(笑)
ロックリングを緩めて少し左ワンを締めてロックリングを固定してクランクでチェックです。
ガタが無くなるまで繰り返します。
ガタが無くなれば完成!
お疲れさまでした。
ロックリングを締める前にガタが無いのに締めたらガタが出る理由を説明しますね。
あなたの作業ミスや技術がないわけではありませんので安心してください。
左ワンで玉当たりを出した位置はその状態ではベストな状態です。
ですが、ロックリングを絞めると左ワンはロックリングによって外側に押し出されます。
これがロックリングを締め付けたらガタが出てしまう理由です。
このワンが押し出されることを見込んで少し強めに玉当たりを出すということもできます。
おそらくベテランの技術者はできるのでしょう。
でも、普通の方(私も含めて)はできないので、時間と手数をかけてベストな玉当たりを出しましょう。
結果が同じならOKですもんね。
まとめ
カップ&コーンのBBのオーバーホールは意外と誰でもできる作業です。
クランクを外せて、ロックリングさえ外すことができればいいので大きな工具は必要ありません。
カップ&コーンはオーバーホールを定期的にすれば一生使えるBBです。
できれば自分で定期的にメンテナンスしたい部分です。
フックレンチとコッタレス抜き工具をそろえて定期的なメンテナンスをしましょう。
グリスの量について
グリスは少ないと抵抗が少なく軽く回るようになります。
攪拌抵抗といって、ベアリングがグリスをかき回す抵抗が少なくなるからです。
しかし、グリスが少ないとオーバーホール(グリスアップ)の頻度が上がるので、ご自身のメンテナンスサイクルを考えて調整してください。
最後に完成後のクランクの空転の様子を動画でご覧いただきましょう。
クランクが止まってから少し逆回転しますね。
ペダルの重さのせいです。
軽く回ってるということがわかっていただけると思います。
ただし、この空転に意味は全くありません。
よく自転車屋さんが、クランクを空転させて『このBBすごいでしょ』的なものがありますが、私から言わせれば『で?なに?』って感じです。
自転車は空転させる乗り物ではありません。
空転させる意味はグリスを回す理由と、玉当たりの状態を見るためです。
カセット式の交換するだけのBBでの空転など何の意味もありませんからね(笑)
空転自慢など空転競技以外何の意味もありません。
ピストの分解記事も合わせてどうぞ。
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