ローラー専用で使っていた自転車についていた汗で固着した、ブレーキキャリパーを分解洗浄後に組み立てました。
動画も用意していますので参考にしてください。
分解して見えてくる構造から、注油しなければならない部分や洗車するときに重点的に洗わなければならない部分がわかると思います。
組み立てには、動くリンク部分の締め付けなどシビアな調整が必要です。
締め付けすぎれば動きが悪く、ブレーキを引きずりますし、締め付けがゆるければガタが出て危険な状態になるかもしれません。
機械系統に強い方、構造が強く知りたい方以外に分解はおすすめできませんので、あくまでも構造を理解できるという点から最後まで読んでください。
複雑なリンクで構成されたデュアルピボット
ブレーキキャリパーには『シングルピボット』と『デュアルピボット』の2種類あります。
シングルピボットの方が構造は簡単で、ブレーキアームの支点が一か所なので『シングル』と言います。
今回組み立てる『デュアルピボット』はアームの支点が二カ所あります。
画像の矢印の部分が支点になるピボット部分です。
リンクが増えれば構造も複雑になり、調整にも神経を使います。
使用する工具
分解するために使用する工具は
- 10㎜のメガネレンチ
- 13㎜のメガネレンチ
- プライヤー
- 2㎜の六角レンチ
- 4㎜の六角レンチ
- T27 トルクスレンチ
六角レンチは良質なものを使いましょう。
ロードバイクのメンテナンスで使用する工具のメインは六角レンチです。
私が使用しているのは『PB』。
工具のシナリ具合でネジの状態が手に伝わってきやすいのでおすすめです。(重要)
硬くてしならない六角レンチは使いずらい。
Wera(ヴェラ)も評判はいいですね。
100均でも買える工具なのに高い工具は・・・
「メインで使う工具は良いものを使う」理由は時間と費用の節約です。
安物の工具でネジを壊せば費用が掛かり、そのために修理する時間も必要なので時間も無駄になります。
ロードバイクは六角レンチがメイン。
良いものを使ってください。
組み立て動画
リンク部分には薄いワッシャが入っているので注意
組み立てで注意するのは、リンク部分に入っているワッシャです。
デュラエースではワッシャではなく『ベアリング』が入っているので、作業的に少し難易度が上がりますね。
ワッシャは、リンクが動くときの摩擦を減らしてくれる大切な部品です。
両面に薄くグリスをぬって組みつけます。
分解するときにワッシャの存在に気がつかないとポロっと落としてしまうかも。
気をつけてね
リンクはガタが無く動きがスムーズであること
リンク部分の動きが悪いと、スプリングの力で戻すことができずにブレーキを引きずるようになります。
動きをよくするため、締め付けがゆるくガタのある状態だとボルトに負担がかかってしまいます。
ブレーキをかけるたびに『ガタガタ』と異音がするなど危険な状態にもなりかねません。
ガタが無く、動きがスムーズで引っかかりのないように調整するのは慣れていても時間がかかります。
動画でもいちばん時間がかかっているでしょ(笑)
ナットを締めるとクリアランスが変わる理由
今回、フレームにつく部分(キャリパーの中心)のリンクは分解していません。
2㎜のイモネジをゆるめることができなかったからです。
イモネジをゆるめ、T27 のトルクスレンチでゆるめればリンクを外すことができます。
リンクはすべてボルトとナットで固定されています。
クリアランスが無いとリンクは動かないので『ナット』はゆるみ止めの役割をしています。
部品を固定するためのナットではないです。
ボルトを締めてクリアランスを出した後でナットを締めます。
すると、今までよかった動きがかなりシブくなるんです。
時には固定されてしまうことも。
時には固定されてしまうことも。
理由がわかっていれば作業時間も短縮されるので説明しますね。
ネジにはピッチというものがあります。
ピッチとはネジ山とネジ山の距離です。
1.25㎜であったり1.5㎜、小さいネジだと1㎜と言われるのがネジピッチです。
ネジは締め付けると動かないですが、ゆるんだ状態だとねじピッチの分だけ動きます。
おおよそねじピッチの半分の量(1㎜以下)だと思いますが、手では感じることはできません。
リンクの動きをボルトで調整した時には、ねじピッチ分の遊びがあります。
ナットを締めると、この遊び分を締め付けるのでクリアランスが無くなって動きがシブくなるわけです。
つまり、リンクなどの動く部分の調整は『ガタ』を多めにして、ロックナットで締め付けた時にちょうどいいクリアランスになるようにしなければなりません。
ロックナットを締め付ける時のリンクの状態は、ガタがある状態でいい状態とはいえません。
ロックナットを締め付けて、ねじピッチ分の遊びがなくなるのを予想してクリアランスを調整します。
難しそうでしょ(笑)
技術ではなくて【慣れ】なので、慣れればあなたでも必ずできます。
デュラエースはリンク部分にベアリングを使っています。
キツク締め付けてしまうとベアリングを壊す可能性があるので、デュラエースを分解する方はリンク部分の締め付けには特に注意してください。
構造を知ればメンテナンスのポイントがわかる
ブレーキキャリパーは止まるための重要な部品なので『分解』はお勧めしません。
この記事と動画で構造を理解してください。
そのうえで、あなたの自転車のブレーキキャリパーと見比べてみましょう。
どこがいちばん汚れていますか?
リンク部分ですよね。
隙間に入った泥や砂などは見えにくいですが、たくさん入っています。
センターシャフトのトルクスレンチのボルト部分はきれいになっていますか?
泥や砂がたまっているのではないかと思いますがどうですか?
シマノの現行のデュアルピボットブレーキキャリパーでは、センターシャフトの頭は見えないかもしれませんがセンターシャフトは存在します。
リンク部分のボルトは動きませんが、リンクはボルトの頭の部分で動いています。
動画で、ボルトにグリスを塗るときにボルト側の小さなワッシャにもグリスを塗っているのに気がついたでしょうか?
工具をかける頭の部分でもリンクはボルトの内側で動いていて、その動きをスムーズにしているのはワッシャです。
この部分には泥や砂がたまりやすく、特にセンターシャフトの部分は見えないのでさらに泥などがたまっているはずです。
自転車を洗う場合は、リンクをきちんと洗い、注油するのも忘れないようにしてください。
注油はチェーンオイルで大丈夫です。
私は『メンテルブ』を使っていますが、あなたが普段使っているチェーンオイルを使ってください。
あなたのチェーンオイルは水置換性タイプでしょうか?
メンテルブのような【水置換性】のオイルは洗車後に使うのに非常に適しています。
水置換性のオイルじゃないとダメということはないですが、隙間の水を追い出してくれるオイルのほうがパーツのためにもいいです。
CRC 5-56などの浸透潤滑剤は使わないでくださいね。
固着しているときに使うのはいいですが、長期の潤滑には不向きです。
5-56は乾燥してしまう潤滑剤なので、プロメカニックは絶対に使いません(笑)
リターンスプリングのスリーブにも注油
動画の最後にリターンスプリングを組みつけています。
小さなスリーブがあるのですが、スリーブの役割も理解しておきましょう。
スプリングの片側はセンターのシャフトで固定されています。
キャリパーの動きに合わせてアーム側のスプリングは動きます。
スプリングが直接キャリパーについていると、金属同士が擦れるので動きが悪く異音が出ることもあるでしょう。
そこで、このスリーブが役に立ちます。
あなたのブレーキキャリパーで動かしてみてください。
スリーブの中でスプリングが動いているはずです。
動く部分には注油はメンテナンスの基本、洗車後にはスリーブへの注油を忘れないように。
プラスチックなので、攻撃性のある5-56などは使ってはダメです。
メンテルブなど、ゴムやプラスチックへの攻撃性が低いものを使ってください。
ときどき割れてなくなっているものもあります。
あなたのブレーキキャリパーにはきちんとついていますか?
無くなっていても、シマノは補修部品として販売しているので、自転車屋さんで取り寄せてもらいましょう。
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デュアルピボットブレーキキャリパー組み立て のまとめ
メンテナンス不足で固着してしまったブレーキキャリパーを再生しました。
分解して洗浄すれば、汚れがたまりやすい部分や注油のポイントなどがわかってきます。
リンク部分への注油はもちろんですが、ボルトの頭やスプリングのスリーブなど、分解して動きを理解することで初めて気がつく部分もあります。
グレードの低いブレーキは、リンク部分はワッシャを使っていますが、デュラエースなどはベアリング仕様となっています。
洗車するときは、キャリパーを動かしながらリンク部分をきれいに洗うようにしてください。
そして、適正なオイルを必要な部分に注油することで長く快適な自転車を維持することができます。
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