チェーンラインと変速性能について 外側へのチェーン落ち 【追記あり】

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ロードバイクのチェーンラインは、ユーザーが選べるわけでも調整することもできない部分です。

シマノのチェーンラインは43.5㎜となっていて、カンパニョーロなど他メーカーもこの数値に合わせています。

ロードバイクのチェーンラインは、先にも書いたように『選ぶことも調整も無理』な部分なのでパーツの組付け状態に従う以外ありません。

今回、組付けに入ってきた自転車は『チェーン落ち』が頻発するということから入庫してきました。

組みつけていった結果、チェーン落ちの原因は『チェーンライン』と『フロントディレーラーのオーバーストローク』にあることがわかりました。

チェーンの動きが複雑になるので伝わるかどうかわからない部分もありますが読んでみてください。

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チェーンラインは合っているがかなりキツイ

コンポは【カンパニョーロ レコード 11s】です。
使うクランクは【ROTORのNoQ】、楕円ではなく真円タイプのチェーンリング。
52t×36tのミッドコンパクトです。

ROTORのBBは、スラスト方向(軸方向)のプリロードはシムで行うようになっています。

右クランクには、『ダストシール』『2.5㎜スペーサー』『0.5㎜シム』を組みつけ、左クランクは『0.5㎜』シムをクランクの回転抵抗に合わせて付けるか省略するようになっています。

今回、0.5㎜シムは左右のクランクでつけない選択をしましたが、メーカーのチェーンラインでは右側に0.5㎜のシムを入れた状態が正しいので入れました。(回転は重くないので正常です)

メーカー純正のBBに対するクランクの取り付けは正しいわけですが、どうしてもチェーンラインが怪しいです。

フロントのチェーンラインが外側にありすぎるように見えます。

フロントの変速調整も、シマノでの調整よりもオーバーストロークさせないとインナーからアウターには上がりません。

おそらくチェーン落ちの原因はここにあると思います。

チェーン落ちでチェーンステーに噛み込む原因はアウター側へのチェーン落ち!

この自転車のチェーン落ちは、チェーンステーとチェーンリングの間にチェーンが挟まって傷をつけてしまうというものです。

私も自分の自転車でやったことがあります。

傷ついたチェーンステ―
チェーンの噛みこみで傷ついたチェーンステ―

デュラエースのコンポを使ってクランクはカンパのレコードという組み合わせでした。

チェーンキャッチャーが原因で、インナーに落ちたチェーンがチェーンキャッチャーに引っかかって巻き上げてしまいました。

この自転車でもチェーンキャッチャーは付いていますが、とりあえず役をなさないように開いた状態でつけてあります。

変速調整をして何度もアウターインナーを繰り返しますが、インナーへのチェーン落ちをするような動きは全くありません。

何度もチェーンが落ちたというのですが、私のところでは一度もチェーン落ちはありません。

そこで『ひょっとしてアウターに落ちるのか?』と予測を立ててチェーンの動きを見てみました。

チェーン位置はリヤがロー側で、フロントはアウターのいわゆる『アウターロー』です。

アウターローでゆっくり回すと、チェーンラインがズレていて今にも外れてしまいそうなくらいです。
もちろん外れることはありませんが、チェーンのインナーリンクがギヤの外側に引っ掛かります。
カンパのカセットはシマノに比べてコンマ数ミリ内側に入っているので、チェーンラインのズレが大きくなります。

チェーン落ちの原因は、リヤがローギヤ寄りの位置にチェーンがあって、インナーからアウターに上げる時に起きると判断しました。

アウターへのチェーン落ちでチェーンステーに巻きあげる

チェーンステーにチェーンが噛みこむ
こんな感じで巻きあげます

チェーン落ちというとインナー側を想像します。
アウター側へのチェーン落ちもあるわけですが、チェーンステーに巻き込むということがなかなか理解しにくいと思います。

リヤのギヤ位置はできるだけロー側に近いところでおこります。
トップ側では落ちても、そのまま落ちるだけのことの方が多い印象です。

では、なぜチェーンステーにチェーンを巻き上げるのでしょうか?

インナーチェーンリングからアウターに上げる時はフロントディレーラーでアウターチェーンリングに押し付けます。

押し付けられたチェーンは、チェーンリングの変速ピンに引っ掛けられてアウターのギヤにチェーンが乗ります。
これがスムーズに行くと変速完了です。

ところが、リヤのカセットがロー側に近いと、チェーンはカセットによって内側に引っ張られています。
フロントのディレーラーをいっぱいまで引いてあげないと変速ピンに押し付けることができません。

つまり、トップ側にある時よりも大きな力でチェーンをアウターチェーンリングに押し付けることになります。

ここでうまく変速ピンに引っかかればいいのですが、そうでない場合チェーンとチェーンリングは一瞬ですが空転します。

クランクの回転速度が瞬間的に上がったところで、次の変速ピンに引っかかりチェーンがアウターに上がりますが、下側はまだインナーの位置にあります。

リヤのチェーンは、リヤディレーラーでロー側の位置にありますよね。
上側でも下側でもカセットの位置にチェーンは引かれています。

ここで、チェーンが暴れインナーのチェーンリングから外れてしまうと、チェーンはリヤディレーラーのテンションケージによって上に持ち上げられます。
しかも、ロー側にあるので内側にも引かれることになります。

内側によって、さらに上に持ち上げられたチェーンはクランクのスパイダーアームに引っかかってチェーンステーとギヤの間に入ってしまうということになります。

しかも、変速性能が優れているシマノのチェーンリングだとフロントディレーラーは最小限の動きでいいのですが、オーバーストロークさせないと変速しづらいチェーンリングだとなおさらこういったことがおこりやすくなります。

チェーン落ちを防ぐには技術が必要

チェーン落ちを防ぐことはできないのでしょうか?

なかなか難しいので、100%とは言い切れません。

落ちないようにするテクニックが必要です。

  1. リヤカセットの位置はロー側から3~4枚くらいの位置を避ける
  2. トルクをかけた変速は厳禁
  3. アウターに上げる時に変速レバーの力を抜かない
  4. オーバーストロークさせているので、力を入れすぎるとチェーンがアウターに落ちる可能性がある

最低でもこのくらいの技術が必要です。

特に、変速ピンにチェーンが引っかからず、一瞬空転した瞬間にシフトレバーの力を抜いてしまうとチェーンリングが空転し続けます。
フロントディレーラーをオーバーストロークさせているので、力を抜くと変速できる位置にチェーンが押し付けられて無いからです。

チェーンはアウターとインナーの、何もないところの中途半端な位置に誘導されているので外れるかどこかに引っかかるしか行き場が無くなります。

変速が終わるまで力を入れ続けなければなりません。

これが電動だと、モーターは力を抜かないのでチェーン落ちのリスクは少なくなります。

シマノのアウターチェーンリングのギミックはスゴイ

105の変速ギミック
105でもこのレベルはスゴイ

変速でシマノ以上の性能はなかなか出せません。

フロントに関してはシマノ以上の変速性能のクランクに出会ったことはないです。

それは画像を見ていただくとわかります。

これは5700の105クランクです。
105なので上位モデルよりは変速ギミックは控えめになっています。

アウターギヤの裏側に斜めのくぼみが4か所とピンが4本打ってあります。

対辺で2か所ずつなので、変速ポイントとしては2か所になります。

チェーンを乗せてみました。

2カ所でアウターーリンクを待ち構える
必ずアウターが入る2段構え

チェーンがピッタリはまって変速ピンに引っかかるのがわかると思います。

並んで2か所ありますよね。
じつはこれがもの凄い技術なんです。

チェーンはアウターリンクとインナーリンクを組み合わせています。

チェーンリングのこのくぼみに入るのはアウターリンクである必要があります。
インナーリンクだとピンにかかるのもインナーリンクになるからです。

しかし、チェーンのアウターリンクが変速のタイミングでここに入るとは限りません。

そこで、位置をずらして二段構えにしているのがこの2か所ある理由です。

変速を開始して、最初のくぼみにアウターリンクが入ればそのまま変速します。
しかし、インナーリンクだとくぼみに入らずにスルーします。

チェーンの位置とギヤの位置は変わらないので、タイミングを変えた位置にある次のくぼみにアウターリンクが入るようになっています。

2か所あれば、かならずどちらかにアウターリンクが入るわけです。

スゴいですよね。

動画

【追記】オーナーより結果報告合がありました

納車後、オーナーが早速試乗し、結果を報告していただけました。

結果、フロントインナーからアウターに上げる時のチェーン落ちがあったとのことです。
やっぱり、あのチェーンラインではかなり厳しいですね。

オーナーも自転車は組める方なので、その後クランク側に入れた0.5㎜シムを抜いて、チェーンラインをシムの厚さ分だけ内側に入れたそうです。

その結果、チェーン落ちはなくなり変速はきれいにできるようになったとのこと。
やっぱりチェーンラインがすべての原因ということでした。

「0.5㎜なんて意味のない厚さ」と思うかもしれません。
シャープペンの芯ほどの厚さなので、現実には大した厚みではないです。

ただ、工業製品にとって0.5㎜ってものすごく厚い部品で、今回のチェーンラインにしても斜めになる部分ということもあって0.5㎜はかなり大きな数字です。

フレームとのマッチング、さらにコンポとのマッチングに合わせた「現物合わせ」ということが必要になるサードパーティ製のパーツではこういった細工が必要になるわけです。

メーカーは左クランクの0.5㎜シムの増減でスラスト方向のガタを調整せよ!とのことなので、両方のシムを抜くことはNGかもしれません。

なので、ガタが出るような場合には、右側は0.5㎜を抜いた状態でその分を左に入れるということでつじつまを合わせる方がよさそうです。

とりあえずチェーンラインというところまで原因を突き詰めた結果、チェーン落ちに関してはいい方向に行って良かったと思います。

まとめ

チェーンリングの変速性能はシマノが世界一だと思います。

サードパーティー製のチェーンリングにはリスクがあります。

ただチェーンが落ちるだけならいいのですが、チェーンステーにチェーンを巻き上げてしまうこともあるわけです。

「変速動作で力を抜かない」ことで防ぐこともできますが絶対ではありません。
電動だと力を抜かないし、指定位置で必ず止まるのでチェーン落ちのリスクは激減します。

他社メーカーの変速性能がシマノに追いついてくれればこういったトラブルも防げるでしょうが、特許などの関係で難しい部分もあるのではないかと思います。

それぞれのパーツには利点もあれば欠点もあります。

欠点を理解しつつ使うことが必要で、欠点を補うテクニックが必要なのは言うまでもありません。

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