自転車でも、オートバイでも自動車でも家電でも、組み立ててあるものにはネジがついています。
ゆるめようとして「やっちまった!ナメちゃった」ってことありますよね。
毎日ネジをゆるめたり締めたりしている私たちプロでも、同じようにナメてしまうことがあります。
ただ、その頻度はアマチュアより少なく、その後の対処法も知っているのであまりあわてることはありません。
どうすればプロのようになめずに作業できるのか?
また、もしもナメてしまったらどういうふうにすれば解決するのか?
防止法と解決法を解説します。
工具でボルトなどの頭をナメてしまうのはカムアウトが原因
われわれプロでも、ネジをゆるめる時に工具でナメてしまうことはあります。
アマチュアの方のような頻度ではなくても、絶対にやってしまいます。
工具でナメてしまう原因は【カムアウト】という力のかかり具合で起こる現象によります。
カムアウトは特にドライバーでの作業でおきるので、+ドライバーを使う時はカムアウトを意識して作業しています。
ほかのソケット工具や、メガネレンチなどでもカムアウトは起きるので、そういった場合にも作業は慎重になります。
カムアウトってナニ?
カムアウトを解説します。
ネジをゆるめる時、工具はネジに当たっている部分から外れようとする力がかかります。
これが【カムアウト】です。
+ドライバーではどういう状況でも、必ずカムアウトするので+ドライバーでカムアウトを解説します。
たぶん誰でも経験しているハズです。
ドライバーはネジのサイズに合ったものを使うという前提でお話ししていきますね。
そもそもサイズがあっていなければ、カムアウト以前の問題です。
ドライバーをネジの頭に差し込んで回そうとすると、ドライバーの先端とネジの頭の部分では上方向、つまり浮き上がろうとする力がかかります。
これは、右でも左でも回すことでおきるので、締める時でもゆるめる時でも常に意識していないと必ずナメてしまいます。
プラスやマイナスなどのネジで特にカムアウトはおきますが、六角のボルトナットでも、ロードバイクで主に使われているHEXボルトでも同じようにカムアウトでナメてしまいます。
ネジに対して工具は外れようとする力がかかることをカムアウトと言います。
カムアウトを意識して、外れないように力をかけることでネジをナメるということを防ぐことができます。
工具は押す力が最も重要
カムアウトがナメる原因なので、それを防ぐことによってネジをきれいにゆるめることができます。
ではどうやればカムアウトを防ぐことができるでしょうか?
それは【押さえる】ことです。
ドライバーを使う場合は、ドライバーをネジに押しつける力は8割くらいです。
ほぼすべての力を押さえる力で使います。
回す力は2割なので、大きな力は使いません。
もっとも、強く絞まっているものの場合でも、その力配分は同じで全体の力を上げて対応します。
最も力を入れる場合は、上半身の体重をすべてドライバーにのせるということもあります。
それでもナメてしまった時の対処法
われわれプロでも、ネジはナメます。
対処法がわかっているので、すぐに違う方法をかんがえます。
今回、記事にしたきっかけは「クランクの六角ボルトをナメてしまったので外してほしい」という作業依頼が入ったからです。
これを参考にして対処法を解説します。
まず、原因は六角レンチがカムアウトしたのをそのまま回したことにあると思われます。
または、工具のサイズがあっていないものかもしれません。
初期の状態で早めに持ってきていただいたので簡単にゆるめることはできました。
まず、私の手持ちのスナップオン工具でゆるめてみますが、やはりナメてしまいそうなので違う方法で作業します。
使うのはケミカル剤です。
これでゆるまなければ、また方法を考えなければなりません。
『Holts SCREW CACH』を使います。
ホームセンターでも簡単に手に入るので、工具箱に一本入れておくと便利ですよ。
これは滑り止め剤で、砂のようなザラザラした粒子のケミカルです。
これを六角の中に少量入れます。
工具を差し込んで、少しだけ頭を叩いて奥まできちんと差し込みます。(ケミカルで奥まで入らないことがある)
ゆっくり様子を見ながら回すと工具が滑らずにゆるめることができました。
ロードバイクの場合、代用できるケミカルもあります。
『フィニッシュライン ファイバーグリップ』です。
同じようなものなので代用することができます。
シートポストなどのすべり止めで使うケミカルですが、逆にスクリューキャッチがファイバーグリップの代用で使えるかはわかりません。
六角レンチはソケット式の方がいい理由もカムアウトにある
六角レンチはどういったものを使っていますか?
だいたい多くの方は『 L 型』の六角レンチですよね。
L型のものは、カムアウトに弱いので、できればソケット式をおすすめします。
L字でも上から押さえれば大丈夫なので、問題はありません。
ですが、少しナメそうになった時はしっかりと押さえることができるソケット式の方がいいです。
動画のように、手のひらで包み込んだ工具で押し付けながら回すことができます。
わたしも L型 をメインで使いますが、状況に応じて L型 を使わないという選択をします。
さらに緩まなかった場合の対処法
プラスネジであれば『ショックドライバー』、ナットやボルトであれば『ターボソケット』、つかむことができるのであれば『バイスプライヤー』で作業します。
それでもダメな場合は、ボルトやナットを対象物に溶接してゆるめる方法もあります。
さらにダメなら、ドリルで工具のかかる部分を落とすという工程が最終手段になります。
ここまでくるとかなり大げさな作業になるので、できるだけそうならないように一つずつ手順を踏んだ作業工程で進んでいきます。
まとめ
ネジの頭をナメることはよくあります。
われわれプロでもやることなので、アマチュアの方はなおさらだと思います。
ただ、プロはナメないコツを知っているからだけで特殊な作業はしていません。
それは、工具が対象物から外れないように力をかけているだけです。
ただそれだけで、ナメない作業をすることができるようになります。
また、ナメてしまってからの対処を知っていればすぐに次のフェーズに移ることができます。
経験値でもあるので、誰にでもできることとは思いませんが、スクリューキャッチなどのケミカルを試してみることくらいはできるのでやってみてください。
最終的に『できない』と思ったら、早めにプロにまかせましょう。
「そうなる手前でゆるめることができたのに」と思うこともよくあります。
グチャグチャにする前にあきらめることも大切です。
今回、ゆるまなければ下のリンクの工具を使う予定でした。
価格も手ごろなので、まずはこういったものでやってみるのも
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