この記事ではロードバイクのチェーンオイルについてWAKO’S製品の2点を取り上げています。
それぞれの特性を記事にしていますので少し長いですがお読みいただければと思います。
特に【水置換性】は重要な性質ですので、ご存じない方はできれば読み飛ばすことのないようにお願いします。
チェーンオイルは何を使ってますか?
まさかとはおもいますが、何を使っていいのかわからずに浸透潤滑剤などを使ってないですよね?
浸透潤滑剤も潤滑できますが、長期にわたっての潤滑をしない特性があるのでチェーン等に使ってはダメです。
チェーンの寿命を著しく下げてしまいます。
チェーンオイルには浸透潤滑剤ではなく潤滑剤を使う
浸透潤滑剤で一般的なのがCRC (呉工業)の5-56 だと思います。
CMなどでさび付いたボルトがスルスル回るのを見たことがあると思います。
実際はあんなことにはなりませんが(笑)
お勧めのメーカーのWAKO’Sでは『ラスペネ』という自動車整備業界では最強の浸透潤滑剤があります。
最強と言われるのは「ラスペネで緩まなければ他の商品ではまず無理」と言われているからです。
自動車整備業界でWAKO’Sが有名になった一つのきっかけがこのラスペネだといってもいいと思います。

私も仕事ではラスペネに何度も助けられてます。
CRC 5-56 は入手性がいいのでご家庭に一本あったりするのではないでしょうか?
浸透潤滑剤としては入手性がいいのは利点ですが性能ではラスペネには及びません。
ご家庭で少しさび付いたネジを緩める程度では使える商品ですが、自動車やバイクなどで本当に緩まないものには全く効果がないです。
あくまでもプロ目線での話ですが、 5-56 は『灯油』レベルです。
塗布して放置すると乾燥しちゃうのも灯油レベルです。(長期潤滑には全くの不向きです)
本当の決戦用なら 5-56 でも使えます。
数キロで乾いたり飛び散ったりするでしょうから数キロの決戦なら大丈夫と思いますが、あえて5-56を使う意味はないですよね。
5-56 と比較するとラスペネの価格は非常に高いですが、性能の違いは歴然なので浸透潤滑剤においてはラスペネが最強なのでお勧めです。
ロードバイクのチェーンオイルに最適なチェーンルブとメンテルーブ
私が現在チェーンなどに使ってるのは WAKO’S の『メンテルーブ』です。
チェーンルブも非常にいいんですが、ペダルを踏んだ感じがチェーンルブとは違って柔らか(ショックが少ない)く感じるんです。
チェーンルブはサラサラなオイルでダイレクト感があるイメージ。
対して、メンテルブは間にクッションを挟んでるイメージです。
人間の体の中で最大のパワーを発揮する脚の感覚など、プラシーボ効果でしかないと思いますが何となく違う気がするのでメンテルーブを愛用しています。
使用タイプとしては『チェーンルブ』は回転系で、メンテルーブは『トルク型』とでもいえるかもしれません。

WAKO’S メンテルーブ
多目的防錆・潤滑スプレー
100%化学合成オイルと超微粒子フッ素樹脂により、潤滑性・防錆性・浸透性・水置換性・低温特性に優れる多目的防錆・潤滑スプレーです。
各種機械装置のケーブル・ワイヤー・チェーン・ベアリング・ローラー軸部・ギヤーなどの部品を摩耗・破損・さびから長期間護ります。
WAKO’Sカタログより
メンテルーブは多目的で何にでも使えるのでロードバイクのメンテナンスには欠かせない潤滑剤だといえます。
チェーンはもちろん、ブレーキや変速機のリンク部分にも使えます。
私が特にお勧めする部分は、STI内部です。
グリスアップがなかなかできない部分であり、ライド中に最も動かす部分です。
しかも、内部の状態がつかみにくいのでメンテナンスを怠りがちになる部分といえます。
メンテルブを一吹きしておけば使ってるうちにオイルが回るので潤滑はこれだけでも大丈夫です。
ワイヤーにも使えますが、自転車のワイヤーにはシリコンオイルをお勧めします。
オイルをワイヤーに使うと汚れが付着しやすいので汚れが付着しにくいシリコンオイルのほうが最適だと思います。
私はワイヤーにはシリコンオイルを使っています。
メンテル-ブの欠点
チェーンルブとの比較になりますが少しだけ欠点があります。
それは少し柔らかいオイルなので耐久性がないことです。
チェーンルブは耐久テストをしたことがあり、約300㎞はその性能を維持してくれました。
300㎞でオイルが切れて音が出るということはないので、それ以上でも大丈夫という意味です。
メンテルーブは200㎞位でチェーンメンテナンスしたほうがいい印象です。
チェーンルブより明らかに耐久性は劣ります。
もう一つ、ほんのわずかな感覚ですがチェーンが汚れる印象が強いですね。
しっかり拭きあげてもリンクからオイルが少し出てくるのでその部分が汚れます。
ウエットタイプなのでこの点は仕方ないですね。
ウエットといっても、砂などを引き込むようなことは少ないのでその点は安心できます。
チェーンルブがハーフウエットタイプなのに対してメンテルーブはウエットタイプになります。
WAKO’S チェーンルブ

浸透性チェーン用防錆潤滑剤
フッ素樹脂配合で、自転車やバイクをはじめ各種チェーンに求められる性能を高次元で実現した、ハーフウエットタイプのシールチェーン対応チェーン用防錆潤滑剤です。
薄いクリアな被膜なのでカラーチェーンにも使用でき、砂や埃等が付着しにくい特性を持っています。また水置換性を有しているので金属表面に付着している湿気を追い出し、防錆・潤滑皮膜を形成します。
WAKO’Sカタログより
チェーンルブの使用用途はチェーンだけではありません。
メンテルーブと同じ多目的潤滑剤としての性能もあわせもってます。
メンテルーブと比較して少し硬いオイルなのでその点で注意が必要です。
ワイヤーなどに使うと引きが少し重くなるかもしれません。
ワイヤーなどはオイルを使うよりもシリコンオイルを使うことをお勧めします。
固いオイルをチェーンリンクに浸透させる技術
メンテルブはオイルそのものなのでスプレーすればリンクの中に浸透していきます。
チェーンルブは少し硬いオイルなのでリンクに浸透しにくいために溶剤を使ってます。
溶剤で柔らかくスプレーし、対象物に付着し溶剤がゆっくりと抜けていきます。
溶剤が抜けて浸透し終わった部分にはメンテルーブより硬いオイルが付着して潤滑します。
注油後にチェーンの余分なオイルを拭くタイミングもメンテルーブとチェーンルブでは違うのでそれぞれの特性にあった使い方をしてください。
メンテルーブは塗布後しばらく待ってから拭きあげても大丈夫です。
チェーンルブは塗布後に溶剤が揮発する時間が欲しいので、できれば一晩放置した方がいいです。
一晩放置してリンク内にしっかりと潤滑剤が浸透してから拭きあげてください。
チェーンルブは少し時間がかかりますが、この特性によってチェーンが汚れにくいというメリットがあるので面倒くさがらずに時間をおいて使ってください。
カタログ説明にもありますがハーフウエットタイプというのはこういった溶剤が揮発した後のことをいっています。
ウエット噴射後に乾燥してハーフウエットという意味です。
変速機などのリンク部分などの潤滑はチェーンルブでも大丈夫です。
ブレーキキャリパーや変速機なども問題ありません。
STIに関しては内部にプラスチックを使ってることからチェーンルブは避けたほうがいいと思います。
溶剤を含んでいるので、内部のプラスチックへの攻撃性がある可能性を否定できません。
潤滑ケミカルに最も大切な水置換性

水置換性は重要だから読み飛ばさないで!
自転車用に限らず潤滑剤で大切な性能に【水置換性】というものがあります。
この性質は非常に大切な部分なので潤滑剤を選ぶ場合は【水置換性】は絶対に外せない性能です。
水置換性のない潤滑剤はひかえめに言っても使う意味がありません。
水置換性について説明します(重要な部分です)

水置換性
水と油は互いに弾き合うため水に濡れた状態では一般的な浸透剤では効果が発揮されません。
WAKO’Sカタログより
水置換性のある潤滑剤は濡れている状態でも塗布面と水の間に浸透し、水置換(水と置き換わる)して効果を発揮します。
つまり、簡単に言うと水置換性のない潤滑剤は水に濡れた状態では水の膜の上に油膜を張りますが、水置換性のある潤滑剤は水の膜の下に入り込みます。
潤滑剤が水に浮かないので水を浮かせて追い出すことができるわけです。
変速機やチェーンなどのリンク部分に入った水と入れ変わって潤滑剤が入り込みます。
洗車したあとなどでこの性質は非常に重要です。
私はエアーコンプレッサーがあるので、ある程度は水を吹き飛ばすことができる作業環境にあります。
ですが、ほとんどの家庭にはコンプレッサーはないと思うので水置換性の潤滑剤で水分を追い出すことができれば便利ですね。
水置換性はチェーンに特に有効

洗車後のチェーンリンク内に入った水分はエアーだけでは追い出すことができません。
エアーを使うのは自然乾燥を早めるのには有効ですが、そうしてるうちにサビが出てしまうこともあります。
水置換性のあるオイルは濡れた状態のチェーンにつけるだけで水を追い出すので乾燥時間とか不要で洗車後から防錆性能を発揮してくれます。
水置換性は潤滑性能以上に重要です。
チェーンオイル以外のオイルについて
自転車の情報サイトなどで時々話題になるのが【チェーンオイル以外のオイルを流用する】ことがあります。
私の自転車ではないのでそういったオイルがよければ使ってもかまわないと思っています。
私も試験的にいろいろ使ってみました。
- チェーンソーオイル
- ハンマーオイル
- エアーツールオイル
この3種類は使ったことがります。
ほかに話題になってるのが食用オイルですね。
オリーブオイルやサラダオイルがそれにあたりますが、私は使ったことがありません。
オリーブオイルは植物油なので酸化してしまいます。
また、乳化しやすいので植物油をチェーンに使う気にはなれません。
いずれのオイルもチェーンの潤滑という面ではその役割を果たすと考えます。
人間の脚で出すくらいの潤滑であれば油(あぶら)であればミシン油でも重油でも軽油でも灯油でも大丈夫です。
ただし、耐久性などは別の話です。
チェーンオイルを使ってれば1万キロの耐久性が、こういった流用オイルを使ったら3千キロということもあります。
使えることと耐久性は別ということです。
『オリーブオイルが意外といける』耐久性無視ならどうぞ使ってくださいとしか言いようがありません。
安い潤滑剤を使って高い機材の摩耗を早める可能性があるというのは本末転倒かと思いますね。
まとめ
自転車のメンテナンスでラスペネが必要かと聞かれると『必要ないです』とお答えします。
固着してるネジはそう多くないからです。
ラスペネは固着したボルトナットに対して有効な潤滑剤なので自転車メンテナンスで使うことはほとんどないです。
メンテル-ブとチェーンルブは使用用途がかなりかぶってるのでどちらかを1本用意してお使いいただければいいと思います。
ロードバイクで使う場合は、チェーンで使うことがメインになると思います。
『とりあえずどこでも使えるものがいい』というのであればメンテルーブを一度お試しください。
使ってみて「チェーンの汚れが気になる」と感じればチェーンルブに切り替えればいいと思います。
まずはメンテルブ → 気に入らなければチェーンルブ でOKです。
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