固着してしまったボルトやナットを取り外す方法

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ボルトやナットが固着して外れずに困った経験はありませんか?

いろいろな車を扱っていると、固着して取り外せないボルトやナットはよくあります。

特にマフラー関係では、ほとんどが固着していることがありよく折れたりもします。

今回の方法を使えば、固着したボルトナットを緩めることができます。

一つの予備知識として、頭の片隅においておけば「イザ」という時には必ず役に立つので最後まで読んでください。

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外れないボルトやナットは熱を加えるとゆるむ

ガストーチでも十分熱が入る
ガストーチであぶる

マフラー系のボルトナットは、エンジンの熱で高温にさらされています。

エンジンを止めれば冷えますし、高速走行をすれば街乗りをしているとき以上に高温で熱せられます。

金属は熱せられると膨張し、冷やされると収縮しますよね。
熱して冷やされることによって、ボルトナットのネジピッチが変化して固着してしまうわけです。

金属の特性である『熱を加えると膨張する』ことを利用してボルトナットをゆるめます。

使用するのは『ガストーチ』です。

ホームセンターなどで容易に手に入ります。

自動車整備工場では『アセチレンガス』を使ったバーナーで高温に熱しますが、アセチレンガスは簡単に手に入るものではありません。

アセチレンガスを使えば短時間で高温にすることができます。

一方、ガストーチは温度が上がらず時間がかかりますが、時間さえかければかなりの温度まで上げることができるので固着したボルトナットをゆるめたいときは挑戦してみてください。

マフラー系ならほとんどがガストーチでも対応できるはず

マフラーは高温になります。

ガストーチであぶることによって、エンジンの熱以上の高温になりますが、マフラーであれば大丈夫です。

注意するべきは、周りに燃えやすいものや熱に弱いモノがないこと。
また、ボディーに熱が伝わり、室内にあるものが溶けたり燃えたりするので十分注意してください。

ガストーチの炎が対象物に当たったその先にナニかがあったりとかもあるので、周囲に十分注意しなければいけません。

今回は、エキゾーストマニホールドの下側と、テールパイプとのツナギ部分のボルトナットを作業しました。

作業内容は『中間パイプの交換』です

エキゾーストマニホールド付近は必ず固着している
EXマニ付近は固着している

何も問題が無ければ、作業は非常に簡単です。

エンジン側のエキゾーストマニホールド側のボルトを2本取り外し、リヤのマフラータイコとの取り付けのナットを2個外せば作業はできます。

固着していなければ10分くらいの作業時間です。

今回の車両は22年前の車なので、ガッチリと固着していました。

エキゾーストマニホールド側は何もせずに作業すれば確実に折れます。
リヤのマフラー側は折れたとしても、穴を開けなおしてボルトナットで固定すればいいので、最悪折れても問題はありません。

しかしエキゾーストマニホールド側は折れたら、折れ込んだボルトを取り外すなどの余計な作業をしなければならないのでガストーチを使ってゆるめました。

ガストーチは温度が低いので時間がかかる

まず、固着したボルトナットを外す場合に『どのくらいの温度まで熱すればいいのか?』と思いますよね。

何度まで上げればいいんだろ?

外したいボルトやナットが赤くなるまで熱をかけるよ。

答えは「赤くなるまで」です。
鉄を熱すると赤くなりますよね。

ただ、対象物によっては熱が逃げてしまうのでガストーチでは赤くならないこともあります。

特にエキゾーストマニホールドは、部品自体の厚みがあるので、ガストーチの熱ではどんどんエンジン側に熱が逃げてしまいます。

では赤くならないと外れないかというと、大丈夫です。
外れます。

熱する場所をピンポイントで、ネジ部分に集中させましょう。
ゆるめる部分はネジの部分なので、ガストーチの炎をネジ部分に一点集中させれば温度は十分に上げることができます。

くれぐれも周りには注意してください。
今回の場合も、近くにラジエターのロアホースがあったので熱が伝わらないように木の板などで保護しながら作業しています。

作業は素早さが必要 モタモタしてたら冷えてしまう

ゆるめるための工具はそばにおいて作業しましょう。

ガストーチでは温度がアセチレンほど上がらないので、冷えるのが早いです。

冷えると外れないので、また温めなおすことになります。

ガストーチを外してすぐに工具を当ててゆるめます。
「折れそう」と感じたら、熱が足りないので再度温めなおします。

使用する工具もきちんとサイズがあったものを使いましょう。
そもそも、熱がかかったボルトやナットはサビて工具サイズが変わる場合もあります。

そういった場合はあとで紹介する『ターボソケット』を使います。

力を入れてゆっくりとゆるんでくれば、固着は外れているので冷えてもゆるみます。

ゆるめ方のコツ

固着したボルトナットをゆるめるコツがあるので紹介しておきますね。

固着してゆるみ始めたボルトやナットは『緩める』と『締める』を交互に行います。

少し緩めて、少し締めるというやり方で再固着することを防ぎます。
カジりついてしまったネジは、ネジピッチが均等ではなくなるのでゆるめている間に再度カジりついてしまうことが良くあります。

半回転緩めたら1/4回転締めるというふうにやると防ぐことができます。
ダイスやタップでネジを切りなおすときと同じ動作を、ボルトナットで行うわけです。

作業中にネジ山がダメになる場合もありますが、まずは取り外すことを最優先に考えましょう。

工具が合わないくらいネジの頭がやせてしまっている場合

ターボソケット
固着した時の最強アイテムターボソケット

今回の作業では14㎜のソケットを使っています。

マフラーのネジは、サビて工具側ないほど小さくなっている場合があるので、そういう時は特殊工具を使用します。

【ターボソケット】を今回は使います。

ターボソケットは、緩める方向に回すとソケットが喰い込むような方向に入っていくものです。
つまり力を入れると、ボルトナットの頭にどんどん食い込んでいくのでナメるということがありません。

また、ターボソケットを使わない場合でも、使用するソケットは12角ソケットではなく6角ソケットを使用します。

円形に近い12角ソケットは、ナメやすいので使ってはいけません。
必ず6角ソケットを使います。

ターボソケットなんて持ってないんだ

1サイズ小さい6角ソケットを叩き込んで使えないかな?

ターボソケットも誰でも持っているものではありませんね。
そういった時は、ワンサイズ小さいソケットを叩き込んでゆるめましょう。

今回の場合は14㎜のソケットなので、13㎜を叩き込んで使います。
それ以上やせてるものだと、おそらくほぼ丸くなっているので無理だと思います。

ターボソケットを使うか、溶接機があればナットを溶接して外すなど別の方法でしか作業は無理かと思います。

ターボソケットも、イザという時にかなり役立つのでマフラー系統の作業をすることが多い方は用意しておいてもいい工具ですよ。

丸くなったネジ頭でも回せるので、ナメてしまった場合でも威力を発揮します。
これで外れなかったボルトなどはありません。
最悪の場合は折れてしまいますが、ソケットは必ず喰いこんでいます。

整備における必需品です。

固着したボルトナットを外してからの作業が大切

タップやダイスで整形
だたっぷやダイスでネジを整形

固着したボルトナットが外れたら、タップとダイスでネジをさらって整形します。

これをやらないと、取り付けの時にカジってしまいます。

タップやダイスなんて持ってないですか?

一つあるととても便利なので、サンデーメカニックの方は用意しておきましょう。

タップやダイスを単品で買うと高いので、ホームセンターなどで売っている安いセットのもので十分です。
というか、セットものをぜひ買っておいてください。

理由は「普段使うことがない特殊なものまでそろっている」からです。

意外と自動車などでは、ネジの太さやピッチなどは決まっています。
使っていけばわかりますが、セットものの中で使うのはほんの数種類です。

よく使うものは、切れなくなったり割れたりするのが安物のセットです。
壊れたら、そのサイズのタップやダイスをメーカー品のものに買い替えましょう。
こうすることで余計なサイズのものを買うことがなくなります。

ときどき、小さなボルトやナットで「ネジ山を整形したい」とか「新たにネジ山を作りたい」という時に、セットものを買っておけば役に立ちます。

ほんとうに意外なことで「あってよかった」と思います。

今回はM10 の1.25㎜のタップとダイスを使って整形してあります。

整形後は工具を使わなくても、手で根元までキレイにねじ込めるようになります。

取り付ける場合は【スレッドコンパウンド】を忘れずに

固着防止にスレッドコンパウンド
スレッドコンパウンドを忘れずに

二度と取り外さないようであれば必要ありません。

次回の作業を楽にやりたいのであれば、ワコーズの『スレッドコンパウンド』は必ず使用しましょう。

次の作業ではトーチなどを使わずに、作業時間10分で終わらせることができるかもしれません。

こういった『次に作業する人』や『次に作業する場合に備えるひと手間』というのはとても大切なことです。

熱を入れるのならエンジンの熱でも大丈夫なのでは?

ガストーチで熱をかけるのであれば、エンジンの熱でも同じなんじゃないかと思いますよね。

マフラーの作業では、エンジンの熱が冷めてから作業するということが常識になっています。

固着しているネジがある場合でも同じです。

エンジンの熱でも同じように金属は膨張しています。

エンジンの熱でも膨張してたらゆるむの?

エンジンの熱だと均等に熱が入ってるからダメなんだ

固着しているボルトやナットや、その周囲の全体が均等に熱くなっていると、冷えてる状態と温度が違うだけなのでゆるみません。

熱をかけて緩めるポイントは、一か所だけ集中して高温にすることなんです。

温度が高いところと低いところを作って、膨張率の差が無ければゆるみません。

エンジンの熱で高温になったボルトやナットは、かえって作業中に固着して折れることが良くあります。

マフラーなどの作業では、必ずエンジンが冷えた状態で作業しましょう。

まとめ

固着したボルトやナットの取り外し方を記事にしました。

本格的に熱を入れるのあれば『アセチレン』が最強ですが、ガストーチでも作業は可能です。

時間はかかりますが、きちんと熱を入れればゆるみます。

ゆるめる時は冷える前に作業をし、ゆるめて締めるを繰り返しながら少しずつ緩めましょう。

取り外すことができたら、ネジ山の修正は必ず行います。
これをやらないと再度カジりついてしまいます。

タップやダイスは安いセットもので十分です。
買っておけば、必ず役に立つはずです。

今回はガストーチで熱を入れる作業を紹介しました。

くれぐれも注意してほしいのは、熱を加える周囲に燃えるものや溶けるものがないことを確認して作業してください。
特に熱が伝わって燃えることもあるので、車体に熱が伝わって内装を燃やすことがないようにしましょう。

「気がついたら室内に火がついていた」とか、冗談ではなく実際にあった話です。

熱膨張を使えば、ゆるまないものもゆるみますが、危険な部分もあるので周囲の安全を確認しながら慎重な作業をお願いします。

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