FOR THOSE WHO NEVER COMPROMISE 「決して妥協しない人のために」
新型デュラエースのキャッチコピーです。
妥協できない最高峰コンポーネント【デュラエース 9250】が発表されました。
- セミワイヤレス
- 12速
- リヤディレーラーは34tまで対応(ロングケージ)
- 機械式の設定は無し
- リムブレーキモデルあり
INEOS Grenadiers がDOGMA F でリムブレーキを使ったことから、リムブレーキモデルも残るのか?と思ったんですが本当に残りました。
そして、デュラエースと同時にアルテグラも発表されました。
今回のモデルチェンジで、デュラエースと新型アルテグラから機械式変速機は廃止され、Di2のみとなります。
新型デュラエース R9250
新型デュラエースは12速のセミワイヤレスになりました。
性能や特徴はもちろんですが、いちばん気になるのが価格だと思います。
パーツ | 標準価格(税込み) | 9150旧デュラ参考価格 |
---|---|---|
シフトレバー (ディスクブレーキ) | 56.018円 | 88.314円 |
フロントディレーラー | 49.550円 | 40.457円 |
リヤディレーラー | 88.704円 | 65.379円 |
クランク | 67.452円 | 58.779円 |
クランク パワーメーター付き | 176.253円 | 150.845円 |
カセットスプロケット | 39.270円 | 27.458円 |
ディスクブレーキ キャリパー F&R | 37.005円 | 29.883円 |
リムブレーキ キャリパー | 43.890円 | 37.677円 |
チェーン (XTR) | 7.106円 | 7.106円 |
リヤディレーラーの価格が約9万円なのには驚きです。
ディスクブレーキのパワーメーター付きクランクで組むと、パーツだけで約45万円になります。(バッテリー除く)
旧モデルの9150だと約41万円なので、わずかに値上がりしているイメージですね。
もっともこれは低下の参考価格なので、いずれ通販などで35万円くらいで手に入るようになるのではないかと想像しますが、いずれにしてもプレミアムな価格には違いありません。
デュアルコントロールレバー STI
- セミワイヤレス
- エアロポジション
- ブレーキストローク
- バッテリー残量表示
- ディスクブレーキモデル & リムブレーキモデル
- 機械式は廃止 Di2のみ
デュアルコントロールレバーはCR1632のボタン電池を使ったワイヤレスです。
SRAMはCR2032を使っているのに対して、シマノはCR1632になっていますがこれにも理由があるそうです。
- コンビニでも手に入る
- 世界規模での入手性
CR2032の方が入手性はいいと思うのですが、世界的にみるとCR1632の方がいいんでしょうか?
バッテリーはブラケットトップにスライドするように取り付けています。
ブラケットトップにした理由は交換のしやすさなのでしょうが、スライドさせるためには小さなプラスドライバーが必要なので、出先で交換するというのはちょっと現実的ではなさそうです。
バッテリーの寿命は1.5~2年らしいので、1年ごとに交換すれば電池切れのトラブルは防げますね。
誕生日や年始など、忘れることのない記念日で交換すればいいと思います。
同じワイヤレスのSRAMにはない機能が、シマノのSTIにはあります。
それが電池残量の表示です。
ボタン電池の管理がワイヤレスではポイントになります。
走行距離や変速回数で大きく電池の消費は変わるので、たくさん乗る人は1年でいいでしょうが、あまり乗らない方は2年でもまだ残量がある可能性もあります。
そこでシマノは、残量表示の機能を持たせています。
変速スイッチの大と小を同時に長押しすると、レバーの前にグリーンのLEDが点灯します。
- 緑点灯 電池残量10%以上
- 赤点灯 電池残量10%未満 (交換が必要)
エアロポジション
あなたはブラケットの突き出している部分を持つポジションを取ったことがあるでしょうか。
ドロップハンドルはいろいろな場所を持つことで、疲労を軽減することができますが、ブラケットトップを持つポジションもそのひとつです。
私は「ツノポジション」と言っていますが、出っ張りをもってヒジをハンドルにつけるエアロポジションをとったときにヒジを内側に入れやすくなっているのが新型の特徴です。
正面からブラケットを見た時に、ブラケットップが内側に傾いています。
いままではブラケットを内側に傾けてつける選手がいたことから、今回は形状を見直しています。
UCIルールでエアロポジションの規定が厳しくなったことも影響しているのでしょう。
油圧ブレーキになったことで、ブラケットとハンドルのクリアランスが広がり、ブラケットの下に3本の指が入るようにもなっています。
スプリンタースイッチなどのオプションにも対応していますし、ワイヤレスでの運用ではなく、フルハーネスでの組付けをすることができます。
ブレーキストローク
9250のSTIレバーのブレーキストロークは9150よりも広くなっています。
レバーのストロークが広いということは、微妙なブレーキコントロールがしやすくなります。
下りでのコーナリングなどのスピードコントロールで「あて効き」をしますよね。
わずかなタッチのブレーキコントロールは、レバーストロークを増やしたことでリムブレーキのコントロール性が再現されているそうです。
はじめてディスクブレーキに乗る方でも違和感なく乗れますよ。
リムブレーキモデル
モデルチェンジでリムブレーキモデルはなくなると思っていましたが、リムブレーキも継続販売します。
ただ、リムブレーキモデルはワイヤレスで組むことはできません。
9150までのように、STIからバッテリーまでは配線が必要になります。
エレクトリックワイヤーも細くなって新しいものになっているので、ハンドルやフレームに通しやすく、柔らかいので曲がりにも強いようです。
コネクター部分も小さくなっているので、9150などにはそのままでは使うことができません。
シマノは部品の形状が変わると旧製品には使えない場合があるのですが、今回シマノは変換コネクターで9150などに使うことができるようにしています。
9150以前のモデルは変換コネクターを使えば新しいエレクトリックワイヤーを使うことができるということですね。
断線やコネクターが壊れても、補修パーツで困ることは無さそうですね。
クランク
クランク形状は変わりました。
ギヤを固定するアームが細くなって、クランクの中心部が少しくぼんでいます。(DURA のロゴのあたりです)
このくぼみは靴と擦れないためのものらしいです。
靴で擦れてクランクのロゴが消えかかっている方もいるのではないでしょうか?
さらに、左クランクは接着による中空ではなく、中空鍛造になっています。
接着がはがれるトラブルはこれで無くなりますね。
クランク長はあらたに160㎜と177.5㎜が追加されました。
変速機はデュラで組んでも、クランクだけ105の160㎜を使っていた方もいるのではないでしょうか。
また、105ではパワーメーターが対応していなかったりするので、パワーメーター付きの160㎜クランクは小柄な方やショートクランクを使いたい方には朗報ですね。
ギヤの種類は3種類。
- 50-34
- 52-36
- 54-40
53-39のいわゆるノーマルクランクがなくなって、かわりに54-40なんて見慣れないギヤ数のクランクがラインナップに入りました。
12速でワイドギヤになったためでしょうね。
パワーメーターの測定精度は±1.5%で、バッテリーは300時間の使用が可能になっています。
パイオニアの技術が入っているのかは不明です。
フロントディレーラー
- 前面部33%削減
- 重量96 gに削減
- 変速スピードのアップ
フロントディレーラーはかなり小型化されています。
今まではフロントディレーラーにコントロール機能を持たせていましたが、新型になってコントロール機能をリヤディレーラーに組み入れたのでスッキリしたフロントディレーラーになりました。
あの頭でっかちなデザインに違和感を感じてた方もいるのではないでしょうか。
ただ、羽が黒くなってるのに違和感がありませんか?
カンパのようにカーボンを使っているならわかりますが、アルミプレートを使っているのになんでわざわざ塗っちゃうんですかね。
変速スピード
新型FDは変速スピードがかなりアップしています。
9150のFDより45%のスピードアップです。
7950のころは、機械式の方が変速は速かったんですが、今は機械式のFD変速はDi2に勝てません。
45%速くなったといってもどのくらいかわかりませんよね。
9150のリヤディレーラーの変速スピードと、ほぼ同じだというとわかっていただけるでしょうか。
9150で一段変速するスピードで、アウターからインナー・インナーからアウターに変速します。
9150が「ウィ」だとしたら9250は「イ」みたいな速さです。
この速度を実現したのがFDのリンク機構の廃止にあります。
9150までのFDはモーターから羽までをリンクでつないで動かしていましたが、9250ではリンク機構はありません。
FDの羽をモーターで直接動かすことで、FDの動くスピードを上げています。
リヤディレーラー
ワイヤレス通信の頭脳がリヤディレーラーです。
今まではフロントディレーラーでリヤディレーラーのコントロールをしていたのが、新型ではリヤディレーラーでフロントディレーラーをコントロールします。
STIからの信号 → リヤディレーラー → バッテリー → フロントディレーラー になります。
配線の間に割り込ませる「ジャンクション」も新型では必要ありません。
すべてリヤディレーラーがその機能を担います。
ジャンクションがないので充電もリヤディレーラーからです。
落車などでリヤディレーラーがダメージを受ける場合がありますが、コントロール部分を内側にしてあるので落車などで路面に触れることは少なくなっています。
しかし、ハンガーが曲がったりして、ホイールに巻き込んでしまった場合のダメージはかなり大きいですね。
壊してしまうと9万円が吹っ飛ぶので財布の軽量化になるのは間違いありません。
ハンガーの曲がりには気をつけなければなりませんし、ビッグプーリーなどの社外パーツをつける時はよく考えてつけて下さい。
変速スピードは9150に比べて58%も早くなっています。
特に9150でイマイチだった中間ギヤの変速のもたつきも改善されているらしいです。
9150で17tから16tへの変速や、16tから15tへの変速でもたつく経験をされたことは無いでしょうか?
微妙な調整で何とか妥協点を出すことはできるのですが、9250ではこの部分は改善されているらしいです。
対応歯数も34tなので、コンパクトクランクと合わせて使うと 1:1 のギヤ比が実現します。
アマチュアライダーにとって、軽いギヤが増えるのはうれしいですよね。
34tがあれば上れない坂はないはずです。
カセットギヤ
11-30と11-34の2種類です。
ギヤの枚数が増えて、カバーできる範囲が広がったことから2種類しかないとのことらしいです。
とはいえ、12-28t などのクロスレシオのカセットが欲しいという声もあります。
10速から11速になった時に、フリーハブの互換性が無くてホイール交換しなければなりませんでしたよね。
ホイール交換に関する出費が増えたのが、10速から11速への移行に時間がかかった要因です。
新型では11速ホイールに12速のカセットギヤが使えるようになっています。
11速ホイールであれば9250へアップグレードすることができます。
ただし、12速になったデュラエースのホイールには11速のカセットギヤは使えません。
つまり、11速ユーザーが新型デュラのホイールが欲しくても使えないということです。
今回のモデルチェンジでアルテグラもホイールを発売しました。
12速アルテグラホイールは11速のカセットギヤを使うことができます。
ちょっとややこしいですね。
- 12速デュラエースホイールは12速だけしかつかない
- 12速アルテグラホイールは11速と12速の兼用
ギヤの構成は以下
TOP | 11 | 10 | 9 | 8 | 7 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | LOW | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11-30 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 19 | 21 | 24 | 27 | 30 |
11-34 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 17 | 19 | 21 | 24 | 27 | 30 | 34 |
12速のカセットギヤは11速に一枚足しただけで、進化していないわけではありません。
ハイパーグライドって聞いたことがありませんか?
いわゆるHGのことです。
12速では、ハイパーグライドをさらに改良してHYPERGLIDE+になりました。
負荷をかけたペダリングの時でも確実に変速します。
上りでも加速しているときでも、トルクを抜くことなく変速するのでタイミングを逃すことはありません。
前に書いた9150でのもたつきもHYPERGLIDE+とRDの相乗効果で改善されているそうです。
ディスクキャリパー
新型デュラエースのディスクブレーキキャリパーはスゴイですよ。
リムブレーキでも「ブレーキとクランクだけはデュラエース」と言っていた私ですが、ディスクブレーキキャリパーも「デュラエース」をおすすめします。
なぜか。
新型デュラエースのキャリパーはモノブロック構造だからです。
旧型のブレーキキャリパーは、二つの部品(2ピース)をボルトで合わせて組み立てられていますが、新型デュラエースは一体型(1ピース)です。
ひとつのアルミのかたまりを削りだして、ブレーキキャリパーを作っています。
つなぎ合わせた2ピースだと合わせ面で歪むので、ひずんだぶんブレーキのタッチが悪くなります。
キャリパー剛性が高いものは「カッチリ」したタッチになって、コントロールもしやすくなります。
ディスクブレーキの場合、キャリパー剛性は高ければ高いほどコントロール性や制動力などすべてにおいていい効果があります。
ディスクブレーキキャリパーで剛性は絶対に必要な要素になります。
パッドクリアランス
ディスクブレーキで気になるのが「ローターとパッドの擦れ」です。
下りなどで「シュッ・シュッ」って出るあの耳障りな音です。
パッドとローターのクリアランスがせまくて、ローターとパッドが擦れることでおこる現象です。
新型のキャリパーは、パッドクリアランスを10%広げているので、ローターとの擦れを少なくしています。
ブレーキオイルのエアー抜きもやりやすくなっているそうですが、実際にさわってみないとわからない部分ですね。
リムブレーキキャリパー
ディスクブレーキがメインになったので、リムブレーキキャリパーの情報が非常に少ないです。
おそらく9100と変わらないと思います。
リムブレーキの性能は成熟していますから、これ以上の改良はないのかもしれません。
バッテリー
バッテリーには3つのコネクターがあります。
ワイヤレスで使う場合はリヤディレーラーとフロントディレーラーにそれぞれエレクトリックワイヤーで配線します。
もう一つはリムブレーキ用ですね。
ジャンクションはないので、STIからバッテリーに直接つなぎために使います。
チェーン
12速のチェーンはデュラエースとしては存在しません。
MTBの上位モデル「XTR」のチェーンを使うことになります。
気になる耐久性ですが、XTRで使われていることから十分な耐久性があると予想されます。
チェーンをつなぐのは「クイックリンク」のみの設定です。
アンプルピンは使いません。
ディスクローター
チェーンとおなじでディスクローターも「XTR」のものを使います。
9100でもローターはXTRが定番でした。
ロードバイクで使うのは【140㎜】と【160㎜】です。
まとめ
9250が発表されても、9000や9100ほどのワクワク感はありませんでした。
でも、こうして調べるごとに「シマノすごいな」と感じています。
ロードバイクの変速の仕組みは昔から基本的な部分は変わっていません。
多段カセットの下にある変速機を動かすことや、チェーンリングの上でチェーンを挟んで移動させる仕組みは40年以上前から変わっていません。
大きく変わったのは電動になったことや、変速段数が増えたことでしょう。
今回の9250でも、大まかな部分では9150と変わりません。
しかし、小さなことの改良で快適性や確実な変速が実現できています。
リヤディレーラーに頭脳をもってきたことも、変速スピードを上げるためですし、フロントディレーラーのリンクの廃止もそうです。
9100での改善点を見直して改良したものが9250デュラエースです。
また数年先のモデルチェンジも楽しみですね。
ぜひ、世界のシマノの技術の集大成を体感してみてください。
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