BB30のフレームにベアリングを圧入しクランクの取り付け作業の記事です。
フレームのBBに金属のシールドベアリングを圧入するためには、専用の圧入工具とまっすぐ入れる技術が必要なのでぜひ参考にしてください。
また、ケミカルもグリスではなく、異音を押さえるための専用のものを使うことによって取り付け後の異音をかなりおさえることができます。
そのためのケミカルや、使い方なども詳しくお伝えします。
正しく圧入すれば、圧入ベアリングでも異音がかなり出にくくなります。
SRAM Red を使うためにBB30にシールドベアリングを圧入
SRAM Red のクランクを使うためにBB30にシールドベアリングを圧入します。
BB30にシマノのクランクを使うのであれば、スリーブを圧入してシマノのスレッドBBを使う方法がベストです。
BB30はBB幅が68㎜なのでスリーブを圧入すれば、JIS規格のスレッド式BBを使うことができるようになるのでメンテナンスの面でも優れています。
今回はSRAM Redのクランクを使うので『SRAM 純正』のBBベアリングを使用して作業します。
BBの圧入で問題になるのが【異音】なので、異音が出ないような組み付けをすることが大切です。
異音を防ぐためにワコーズのケミカルを使います。
異音のために作られたケミカルなので、BBの圧入には欠かせません。
またシールドベアリングは、圧入するときに間違った力のかけ方をすると、新品でもすぐに異音が出ることがあるので気を付けてください。
ネットではワッシャとボルトを組み合わせた【簡易的】な圧入工具を自作して作業している方を見ることがあります。
間違った工具は間違った作業につながります。
シールドベアリングの構造を理解できれば、適切な工具を自作することも可能ですが専用の工具を使うことを強くおすすめします。
ベアリングを圧入する作業
では、ベアリングを圧入していきましょう。
フレームのBB部分をきれいに掃除して、圧入部にゴミなどが無いようにしてください。
BBベアリングの位置決めにCクリップを使っているフレームがあります。
ベアリング圧入の深さを決める大切なものなので、取り付けは忘れないようにしてください。
Cクリップなどのストッパーが無いと、どこまでもベアリングが入ってしまい、万が一途中で引っかかるとフレームが破損する可能性もあります。
今回のフレームは、あらかじめフレームメーカーがカーボンで作っていたのでCクリップを取り付ける必要はありませんでした。
異音防止のケミカルをここで使用します。
【ワコーズ ブレーキプロテクター】です。
グリスを使う方もいるかもしれませんが、グリスは潤滑が本来の役目なのでブレーキプロテクターの方があきらかに効果があります。
BB部分とベアリングの外周に薄く塗っていよいよ圧入です。
30φの内径なので、内径30㎜のアダプターを使います。
ベアリングを圧入するときに、必ず守らなければならない重要ポイント。
ベアリングの外周にのみ力をかけること!
穴の中にベアリングを圧入する場合は、必ずベアリングの外周(アウターレース)に圧力をかけます。
内周部分(インナーレース)に力をかけてはいけません。
対して、軸にベアリングを圧入する場合は逆になります。
アウターレースに力をかけてはいけません。
ベアリングはBB内部のストッパーに当たるまで圧入します。
ボルトを締めて圧入しているとグッと重くなる手ごたえがあります。
ベアリングがストッパーに当たった瞬間なのでそれ以上は入れないようにしましょう。
フレームが壊れてしまいます。
クランクを取り付ける
ベアリングが圧入されたらクランクを取り付けましょう。
SRAM Redの場合、シマノとは逆で左クランクにアクスルシャフトがついています。
左クランクには『プリロード調整用』のアジャスターがあるので、クランクを差し込む前にいっぱいまで左クランクに押し付けておかなければなりません。
SRAMのクランクは、プリロード調整用のアジャスターを使う方法と、ウエーブワッシャやシムを使う方法があります。
フレームによっては、アジャスターを取り外して シムで調整する場合もあります。
今回はアジャスターで調整できたのでウエーブワッシャやシムは使っていません。
アジャスターが使えるかどうかの判断は仮組をします。
クランクの回転の重さや左右(軸方向)のガタで判断します。
8㎜の六角レンチで右クランクを取り付け、回転の重さと軸方向のガタを点検。
仮組では規定トルクで締める必要はありません。
もしベアリングに対して強い圧力がかかってしまう状態だと、仮組でベアリングを壊してしまします。
クランクの回転など、状態を見ながら締めていき、問題なければ本来の指定トルクで締めましょう。
今回はアジャスターを使うことで問題なかったので、この時点で規定トルクで締めました。
クランクボルトの締め付けトルクは54Nmなので、普通の工具の長さであれば力いっぱい締める必要があります。
トルクレンチを使用した方がいいですね。
アジャスターを動かすことができ、アジャスターの可動域の中でクランクのガタが無くなるのであればシムは必要ありません。
回転が異常に重ければ、アジャスターでベアリングへの圧力(プリロード)がかかりすぎているのでシムを使うことになります。
その場合はアジャスターを取り外し、ウエーブワッシャを入れシムで軸方向のガタがない状態にする必要があります。
SRAM純正BBベアリングには、シムなども付属しているので別に用意する必要はありません。
ベアリングの外側にはゴミなどの進入を防ぐカバーがあります。
カバーをつけた状態でベアリングへの圧力は調整します。
左クランクのアジャスターをプラス方向に回します。
調整後に2㎜のロックボルトを締め付けてアジャスターが動かないようにします。
ロックボルトは強く締める必要はありません。
強く締めるとねじ山を壊してしまいます。
以上でBBとクランクの取り付けは完了です。
BB30ベアリングとSRAM Redクランク取り付けのポイント
1.BBベアリングの圧入部分には異音防止のケミカルを必ず使う
2.ベアリングの圧入には専用工具を使い、圧入部分にまっすぐ圧入する
3.ベアリングに対してプリロード調整は、アジャスターまたはシムで調整
4.クランクの締め付けトルクは54Nm、トルクレンチを使用
BBの異音防止ペースト ワコーズ ブレーキプロテクターとは
圧入BBでは必ず使用する・・・というより使わなければならないケミカルが【ブレーキプロテクター】です。
ブレーキプロテクターは異音に特化したケミカルなので効果は絶大なのですが価格が高いのが欠点(笑)
ねっ、ビックリ価格ですよね。
BBの異音防止で使う量はわずかなのにこの価格は、1年に一度のベアリング交換で使うレベルのものではありません。
自転車のほかの場所で使うものでもないので、圧入BBはショップに任せた方が結果的に安く仕上げることができます。
異音に特化したブレーキプロテクターは、ディスクブレーキパッドがズレることによっておこる『カキ~~ン音』を防ぐために作られたものです。
カキーン音とは『自動車を前進・後退した時にズレたディスクパッドがパッドサポートに打ち付けられるカキ~ンという音を防止するグリス』になります。
自動車を前進から後退(またはその逆)してブレーキを踏んだ時にディスパッドはわずかにズレます。
トヨタ車の中にはこの時に、意外と大きな音でカキ~ンという音がする場合があります。
このカキ~ン音を防止するのがブレーキプロテクターなんです。
潤滑の性能はほとんどないので、グリス目的では絶対に使用しません。
なぜグリスではなくブレーキプロテクターなのか?
「ベアリングの圧入にはグリスを薄く塗って・・・」とか言う方もいます。
グリスは潤滑が目的のケミカルです。
しかも、長期にわたって潤滑するのがグリスなのでBBに使うとベアリングは長期間潤滑されます。
ベアリングの圧入部分は動いてはいけない部分で、動くことが異音になるので、グリスを使ってはいけません。
しかし、グリスを使うと音は消得ちゃいます(笑)
これは一時的にグリスがクッションの役割をして音を吸収しているだけです。
グリスの効果が無くなると音が必ず出ます。
音が出る → グリスを塗る → 音が消える → しばらくして音が出る → グリスを塗る・・・悪循環ですね。
圧入するときには、負担がかかってしまうので潤滑剤も必要なのは間違いありません。
なにも塗らずに組むよりもグリスでも塗ったほうがいいです。
でもグリスは・・・ということで、ブレーキプロテクターを使います。
ブレーキプロテクターを使わないのであれば、スレッドコンパウンドのような【固着防止剤】を使いましょう。
銅粉などが異音を防ぐクッションの役割をしてくれます。
ブレーキプロテクターは使う個所が限られますが、スレッドコンパウンドなら1本工具箱に入れておきたいケミカルなので、ベアリングの圧入に応用するのはアリですよ。
ベアリングを圧入するときの取り扱いについて
ベアリングは圧入するものに対して、圧入する部分にだけ圧力をかけます。
BBに圧入する場合はベアリングの外側です。
なので外側の部分だけに力をかけて圧入します。
内側に圧力をかけて入れた場合、ベアリング内部の鋼球に横方向の強い力がかかります。
さらに、ベアリングの内側に対して外側は引っ張られる力がかかるので、圧地点よりもさらに内側に押し付けなければなりません。
ベアリングで最も大切なのは鋼球部分です。。
鋼球に力をかけるのはやってはいけないことなので、かならず圧入する部分にあたる箇所に力をかけます。
平らなワッシャを利用した簡易的な圧入ツールでも「ベアリング外側までの大きさのものであればいいのではないか?」と思いますよね?
ワッシャの強度がしっかりあるものであればそれでもいいのですが、圧入する力がボルトにかかると、ボルトの周囲にもっとも大きな力がかかるので結果的にベアリングの内側に力がかかります。
ワッシャを利用するのであれば、ベアリングのアウターレースだけに力がかかるようにしなければなりません。
なかなか外周にぴったりのものはないので、自動車整備では代用品としてソケット工具をよく使います。
取り外したベアリングを分解して、アウターレースを使って圧入とかもよくやります。
ワッシャを使って簡易工具を使うなら、いらないベアリングのアウターレースをワッシャで圧をかける方法が最もいい方法です。
ベアリングの圧入はただ押し込めばいいというものではなく、それぞれの場所に適した力をかけ、それ以外に力をかけないようにしなければなりません。
いかがですか?
専用工具を使うか専門のショップへ作業を依頼した方がいいと思いませんか?
まとめ
BB30ベアリングの圧入方法を記事にしました。
ベアリングを圧入するときは、異音防止のケミカルを必ず使い、ベアリングには正しく力をかけて圧入することが大切です。
間違った方法で作業すると、短期間で異音が発生したり、ベアリングがダメになります。
ネットにあふれている『簡易工具』を使っての作業は、正しくベアリングに力がかかっていないものです。
簡易工具を使う場合でも、不要ベアリングを使うなどさらに工夫して作業してください。
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