競輪選手が練習中にトラックに衝突 公道でのピストバイクは危険

残念なニュースが入ってきました。

21歳の競輪選手がトレーニング中、路肩に停車していたトラックに衝突して亡くなるという事故。

毎日自転車に乗っているプロ選手でも、こういう悲しい事故を起こしてしまいます。

亡くなった選手のご冥福をお祈りし、二度とこういった事故が起こらないことを願うばかりです。

自転車を趣味としている方は、ロードバイクがいかに危険な乗り物かということを自覚してほしいと思います。

ロードバイクは、人間が自分の力で出せる速度の最も速い乗り物です。

しかし、扱い方を間違えれば自分や他人を巻き込む事故を起こしかねない危険な乗り物です。

ロードバイクで走る公道はサーキットではありません。

車やバイクが公道でサーキットのように【街道練習】していても良いと思えますか?

競艇選手が海や川、湖で練習していても容認できますか?
(競艇ボートは波があると乗れないので海や川では乗ることはできません)

この事故で亡くなった選手が乗っていた自転車は【ピストバイク】です。

競輪で使う競技用の自転車で練習をしていました。
この練習のことを一般的に【街道練習】と言います。

競技用の自転車ですが、前後のブレーキはついているので公道で使用するのは合法です。

しかし、ブレーキがついているとはいえ、ピストバイクの制動距離はロードとは違います。

ピストバイクはロードのように止まれません。

ピストバイクは自転車の中ではとても危険な乗り物です。

今回の事故の原因は公道での速度の出しすぎと前方不注意と言われている

まずは、今回の事故についてわかっていることを書いておきます。

亡くなった選手が走行していた道路は、見通しのいい2㎞くらいの片側二車線の直線道路だったそうです。

練習していたのは一人ですが、同伴者が自動車で伴走していました。

選手の右後ろに併走の自動車が走っていて、前方に止まっていたトラックの後ろに追突して亡くなったという事故です。

この道路は車も少なく、自転車でのトレーニングではよくつかわれている道路らしいとのこと。

とはいえ、見通しのいい道路で前方不注意って?

想像ですが、選手は下を向いて全力でもがいていたのではないかと思います。

伴走者が危険に気がついて声をかけたとしても、選手の耳には走行風の音で聞こえなかったのかもしれません。

ネットでは「トラックが止まっているのが悪い」という声もありますが、私はそうは思っていません。

このトラックが止まっていた理由は「伝票整理」らしいですね。

トラックドライバーも、見通しのいい直線道路なので路肩に停車していても迷惑にならないと思ったのでしょう。

もし、亡くなった選手がピストバイクでもがいていたとしたら、その速度はおそらく60㎞以上だと思います。

60㎞以上の速度でぶつかればヘルメットを着けていたとしても、大きな事故になるのは想像できますよね。

そもそもピストバイクは止まらない乗り物

ピストバイクのブレーキ
ピストバイクのブレーキ

今回の事故で使っていたピストバイク(以下【ピスト】)はこんな自転車です。

  1. 変速機がついていない
  2. リヤのギヤは固定ギヤ

ロードバイクのようにフロントやリヤのギヤに変速機がないのがピストバイクです。

ママチャリのフロントギヤやリヤギヤは1枚なので【シングルバイク】とも言えますが、大きく違うのはリヤのギヤが固定されている事です。

ママチャリはペダルをこぐのをやめると、足は止まったままにできますよね。

リヤギヤが固定されているピストは、自転車が進んでいる限り足を止めることはできません。

足を止めて後輪をロックさせる『スキッド』という曲芸がありますが、競輪選手の乗るピストはギヤが大きいので後輪をロックさせることはできません。

つまり、後輪で強制的に足を回される乗り物です。

競輪の競技中は止まることも速度を落とすこともないのでブレーキはついていません。

街道練習で使う場合、ブレーキがついてない自転車を公道で乗ることは違法なので、選手が公道で乗る場合はブレーキをつけたピストに乗ります。

見た目はロードバイクとギヤの数以外変わらない自転車ですが、制動距離はロードバイクの比ではありません。

体感ではロードバイクと比べても1.5倍くらい制動距離が伸びる印象があります。

なぜ制動距離が伸びるのか?というと「固定ギヤだから」なんです。

ピストで止まろうとブレーキをかけても、足は回っています。

正確に言うと後輪に回されているんですが、この時足の重みで力を入れていなくてもペダルをこいでいます。

では止まるときはどうするか?というと「バックを踏む」技術が必要になります。

普通自転車のペダルは回転に対して前側で踏みますよね。

「バックを踏む」というのは、ペダルが後ろにある時に踏む動作を言います。

ペダルを逆回転させるイメージです。

止まるときはバックを踏むか、意識してペダルに足の重みを乗せない【抜重】をしないといけません。

この動作は慣れないとできないので、ピストに乗るにはロードとは違う技術がないと制動距離は伸びてしまいます。

危険に気がついて、とっさにこの動作ができるには相当な訓練と練習量が必要です。

さらに、ピストにつけているブレ―キはロードのブレーキとは違ってひと昔まえの性能が劣るものがついています。

ブレーキを取り付けることができるフレーム構造ではないので、ブレーキの種類を選ぶことができず性能が低いものをつけているピストは多いはずです。

公道を走るために作られたピストバイクであれば、ロードと同じブレーキをつけることもできますが、競輪で使うフレームはブレーキを取り付けることができる構造ではありません。

  • 止まるためにバックを踏まなければならない
  • ブレーキ性能が劣る

このような自転車に乗って、公道で速度を出せば事故率はロードとはくらべものにならないくらい高くなるのは当然と言えるでしょう。

制動性能で劣るピストバイクは走行性能ではロードを超える

ピストバイクの駆動系
ピストバイクの駆動系

ピストは制動性能ではロードよりはるかに劣る乗り物です。

しかし、走ることに特化した自転車なので速度に関してはロードとはまるで違う乗りものです。

同じ人間が乗っても、出せる速度はピストのほうが高速になります。

ただし、速度を維持できる時間はロードの方が長く維持できます。

つまり、ロードより短距離で速度を出す乗り物がピストです。

なぜロードよりもピストが速く走れるのか?

私なりの解釈でお伝えしますね。

ピストはリヤギヤが固定されているので、クランクの半回転分は後輪がアシストしてくれるからだと思っています。

リヤギヤがフリーで空転できるロードだと、ペダルを踏んでいる前側だけ力をかけますが、引き足側ではフリーギヤによって空転します。

ピストは、引き足側は後輪の回転によって強制的に回されます。

この強制的に回されている状態で、さらに踏み足側で踏めば 後輪の回転 + 踏み足の力 になるので、ロードと比べて少ない力でペダルを踏むことができるわけです。

ピストに実際に乗ると、後輪がアシストしてくれる力を感じることができるので、自分の力以上の速度が楽に出せちゃうんですね。

初めてピストに乗って固定ギヤの速度域を体験したら自分の力を過信してしまうかもしれません。

駆動ロスの少なさもピストの速さでもあり魅力でもあります。

チェーンやギヤなどの剛性は、体感できるレベルのものでロードとはくらべものにならない踏み心地があります。

自分の力がすべて推進力になる感覚はピストならではです。

今回の事故は公道で競技レベルの練習をしていたこと

自転車競技の練習
自転車競技の練習

今回の事故は公道で競技レベルの速度で走ったことが原因だと思います。

ピストは制動性能でロードバイクより劣りますが、ママチャリより止まらない乗り物ではありません。

制動力が劣る乗り物である以上安全に止まれる速度で走らなければならないのは当然です。

とは言っても、競輪選手が練習でママチャリの速度で走るなんてことはないですよね。

しかし、公道はみんなのもので競技場ではありません。

競輪選手が競技レベルの速度で練習するなら競技場で練習するべきです。

競輪選手が競技場をどういった環境で使えるのかは知りませんが、練習時間が取れないとかであれば組織が選手のために改善しなければこういった事故はこれからもおこることになります。。

競輪選手の練習環境を整えない限り、選手が公道で練習するしかないのはいかがなものかと思いませんか?

昔はモータースポーツの世界でもあった

『練習環境がないから公道で練習する』ということはモータースポーツの世界でもありました。

山など民家が少なく人がいない公道を使って車やバイクで走っていた時代ですね。

40年くらい前はサーキットなどは非常に少なく、走行するにしても料金が高いのでどうしても公道で走っていたんですよね。

事故もたくさんありました。

崖から落ちたり亡くなる方も多くなり、住民からの苦情もあって警察の取り締まりも厳しくなったんです。

社会問題にもなり、モータースポーツの需要があるということから企業がミニサーキットを経営するようになりました。

こうしてミニサーキットが全国に展開していった流れです。

すると、公道で走るより安全で合法的な場所(サーキット)に行くようになります。

当時に比べると今は公道で自動車やバイクをサーキットレベルで走らせる人はいなくなっています。

ドリフトのような曲芸集団はまだいるのでしょうか?

今では自動車やバイクのそういったマナーより、自転車のマナーが非難されています。

競輪選手やロードの選手はもちろん、一般のサイクリストが集団で高速走行することが、普通の自転車に対する感覚を超えているために非難されています。

通称「チャリンカス」ですね(笑)

確かにそういわれるのもわかる気がします。

私から見ても『危ないなぁ』と思う事が意外と多くありますからね~。

道路はみんなのもの

道路はみんなのものです。

あなたや私の行動が、多くのサイクリストのイメージを下げるということも頭に入れておいてください。

歩行者は音もなく近づいてくる自転車は恐怖でしかありません。

自動車のドライバーは、路肩をフラフラ走る自転車を追い越すのが困難だとイライラするのも当然です。

興味がないものから「迷惑」とか「不快感」を感じると、徹底的に攻撃し反発したくなることもありますよね。。

逆走・無灯火・スマホなどのながら運転・・・。

自転車に対するイメージは悪いという先入観もあり、さらにロードはスピードや集団という部分でも興味がない方にとっては嫌悪感でしかありません。

自転車がこれ以上の嫌われ者にならないように、安全運転しマナーアップしていきましょう。

ドライバーにも歩行者にも思いやりのある乗り方をしたいですよね。

まとめ

21歳の若い命が失われました。

本当に残念な事故です。

心よりご冥福をお祈りいたします。

自転車は命を失う乗りものであり、命を奪う可能性もある乗り物です。

だれでもそういった危険な速度を出せる乗り物であることを自覚している方は少ないと感じています。

競輪選手なら「止まりにくい」ピストのことは誰よりも理解していたはずです。

ほんのちょっとした油断が今回の事故につながったのではないでしょうか。

ロードバイクのことを「チャリンカス」と言われないようにイメージアップをしていかなければいけません。

一時的なブームで、ロードバイクの楽しさを多くの人が知りサイクリストが増えました。

その一方でマナーが悪い人や集団がいます。

  • 公道で速度を出す
  • 集団での高速走行
  • 歩道を徐行せず走る

など、マナーの悪い行動はやめましょう。

自分たちの走り方を自動車や歩行者に置き換えて考えてみるといいかなと思います。

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