ブレーキオイル交換の作業が入ってきたので【油圧ブレーキオイル交換】を解説します。
ブレーキオイル交換は、作業ミスをすると重大な事故につながる整備です。
安易な作業はしないでください。
油圧ブレーキの構造はハイブリッド車を除くすべての自動車・オートバイ・自転車など同じです。
ポイントは最後のひと手間にあります。
ポイントになる部分の動画もあるので最後まで読んでみてください。
油圧ブレーキの構造
油圧ブレーキの構造は、注射器を2つつなげたような構造になっています。
注射器を2つつなげて、片側を押し込むと反対側は伸び出しますよね。
【ブレーキペダルを踏む】と車輪側のブレーキキャリパーのピストンが飛び出します。
飛び出すピストンでブレーキパッドを押してローターを挟み込むわけですね。
パスカルの原理を使った非常に単純な構造です。
自動車やオートバイに使われているブレーキオイルには『吸湿性』という特性があります。
エンジンオイルなどは水に混ざりませんが、ブレーキオイルは水に混ざります。
水と混ざってしまうので、空気中の水分を取りこんでしまう【吸湿性】があります。
長い間使っていると、湿気を吸って沸点が下がります。
また、水分が入るとブレーキ内部に錆が出ることもあります。
ブレーキオイル交換の流れ
ブレーキオイル交換は、ブレーキラインのオイルを抜くことから始まります。
ブレーキオイルはどうやって抜くの?
ブレーキオイルは、ブレーキキャリパーのブリーダーニップル(以下ニップル)から抜きます。
ニップルにホースを取り付けてニップルを緩めブレーキを何度も踏めばブレーキオイルは抜けます。
自動車の場合は4輪とも作業するので、まずは後輪の左→後輪の右→前輪の左→前輪の右 という順番で抜きます。
この順序は後でやるエアー抜きでも同じです。
ブレーキのマスターシリンダー(ブレーキオイルタンク)から遠い順番に作業することが基本です。
オイルを抜いたら、新しいオイルを入れて【エアー抜き】をすれば終わります。
エンジンオイルなどのように、オイルを抜いて入れるだけではありません。
オイルライン(パイプ内)にはエアーが入っているので、エアーを抜かないとブレーキは全く効きません。
エアー抜きのやり方も解説します。
ブレーキオイルのエアー抜きは2人で作業することが望ましい
手伝ってぇ~~
いいよ~
ブレーキ踏めばいいんだよね
ブレーキオイルのエアー抜きは1人でもできますが、2人で作業することが望ましいです。
一人がブレーキペダルを踏み、もう一人がブレーキキャリパー側で作業します。
目視でエアーが抜けたことが確認できるので2人で作業します。
一人で作業できるブリーダーキットも一応持っていますが、どうしても信用できないので使っていません(笑)
一人でやってもエアーは抜けますが、これから紹介する動画のような作業で確認したいので、私は必ず誰かにブレーキを踏んでもらっています。
ブレーキオイル交換をやってみよう
ブレーキオイルは左後輪 → 右後輪・・・という順番で抜きます。
一輪づつニップルにホースをつなぎ、ゆるめてブレーキペダルを踏んでブレーキペダルがスカスカになるまで何度も踏みます。
ブレーキオイルが抜けたからと、ニップルは開けっ放しではなく必ず締めてください。
開けたままだとほかの車輪のオイルが抜けません。
4輪ともペダルがスカスカになるまでやれば全量抜けています。
オイルラインにオイルを送る
まず、ブレーキオイルタンクに新しいオイルを入れます。
ブレーキラインにオイルを送る作業も、もちろん左後輪からです。
ここからの作業では、オイルタンクのオイルが空にならないように補充しながらやらなければいけません。
車両の構造で出来るものとできないものがありますが、タンクにブレーキオイルの缶を逆さにしておけば補充しながら作業ができます。
左後輪のニップルを緩め、ホースをつけてブレーキを何度も踏みます。
エアーとブレーキオイルが同時に出てきますが、ここではエアーはあまり気にする必要はありません。
ブレーキオイルが十分出るようになれば、右後輪・左前輪と作業をすすめていきます。
排出されたオイルはほぼ新品のオイルですが、決して再利用はしません。
非常にもったいない話ですが、ブレーキオイルは捨てる量の方が多くなります。
ブレーキラインのエアー抜きをする
ブレーキラインにオイルが通ったらエアー抜きです。
左後輪から作業します。
ニップルにホースを取り付けて何度もブレーキペダルを踏みます。
エアーとオイルが同時に出てくるので、エアーが出ない状態になるまでペダルを踏んでオイルと共にエアーを抜きます。
この時、ニップルを緩めすぎているとニップルの隙間からエアーが入るので1/2回転くらい緩めた状態での作業です。
排出されるオイルの中にエアーが混ざっていない状態になれば次の車輪に進みます。
4輪とも排出されるオイルの中にエアーが混ざっていなければひとまず完了です。
ちなみにここまでは一人でもできる作業です。
ここから2人で作業します。
ブレーキラインにエアーが入っていないことを確認する作業
とても重要な作業がここからになります。
動画も用意しました。
画角が悪いので見にくいと思いますが、動画初心者の一発撮りなのでご容赦ください(笑)
左後輪から作業します。
ここで作業している理由も解説しますのでまずは流れを解説していきます。
ニップルにホースを取り付けて緩めます。
1/2回転で十分です。
ブレーキを踏む担当に何度も踏んでもらいます。
オイルだけがホース内を流れてくるはずです。
もし、ここでエアーが混入しているようならエアーがなくなるまで踏んでもらいます。
エアーの混入がないことが確認出来たらニップルを締めます。
ペダルを踏んでいる作業者にブレーキペダルを2~3回踏んだあとで踏みっぱなしにしてもらいます。
踏みっぱなしの状態でニップルを一瞬ゆるめてすぐに締めます。
これを2~3回繰り返してエアーの混入がないことを確認します。
同じ作業を全輪で行います。
ブレーキオイルタンクのオイルが無くならいように気をつけましょう。
オイルが無くなるとエアーが入るのでやり直しになります。
最後に、ブレーキペダルを踏んだ状態にしてもらって、全輪のニップルからのオイル漏れがないことを確認します。
以上でブレーキオイル交換とエアー抜きが終わりです。
最後の作業の意味を解説
ブレーキラインにオイルが通って、エアーが混入していなければエアー抜きはできています。
では最後の作業にどういった意味があるのでしょう?
これは、ニップル周りから混入するエアーを抜く作業です。
動画内で「何回も踏んで~~」と言っているのはライン内のエアーを抜いています。
『ダブって~』と言っているのが、数回ブレーキペダルを踏んでブレーキライン内にに圧力をかけた状態にします。
ペダルを踏みっぱなしにした状態でニップルを緩めると、瞬間的にオイルが抜けます。
この圧力が抜け切る前にニップルを締めます。
オイルは抜ける方向でしか流れないので、ニップル周りからエアーが混入することはないですよね。
もしメカニックに「ブレーキオイルのエアー抜きを手伝って」と言われたら、この作業なので【何度も踏む】【ダブって踏む】作業を手伝ってあげてください。
私は一人でやっているので、いつもお客様に手伝っていただいています。
私を手伝ってもらっているので、この作業になれているお客様もいらっしゃいますね(笑)
ブレーキオイル交換に使う道具を紹介
私の道具は非常にシンプルです。
一人でやっているので、ブレーキホースの途中に【ワンウェイバルブ】を付けています。
ワンウェイバルブは一方通行のバルブで、逆流を防ぐものです。
ブレーキのエアー抜き用で売られているものですが、専用品でなくても大丈夫です。
ホースはホームセンターで買ってきた燃料用のホースです。
内径5㎜、外径8㎜のものです。
排出したオイルを受けるのは500mlのペットボトルです。
キャップに8㎜の穴を開けて使っています。
一人で作業できるワンマンブリーダーもありますが使っていません。
これはエアーの負圧でオイルを抜くのですが、ニップル周りからエアーを吸うことがあるので信用できません。
グリスを使うなど工夫していますが、やはり2人でやる方が確実な作業ができます。
ハイブリッド車のブレーキオイルは絶対に抜いてはいけない
「ブレーキオイル交換ならやったことがある」という方でも、ハイブリッド車のブレーキオイルは絶対に抜いてはいけません。
上記と同じ作業ではエアーは絶対に抜けません。
ハイブリッド車のブレーキは【回生ブレーキ】になっています。
回生ブレーキは、ブレーキを踏むとタイヤの回転力を電気に変えて充電するというものです。
ブレーキを踏んでいますが、ブレーキは使っていません。
モーター(発電機)の負荷がブレーキとなって減速しています。
ブレーキを踏んでるつもりでも、ペダルはただのスイッチでしかありません。
スイッチなので、ブレーキのエアー抜きではコンピューターの「ブレーキの整備モード」にしないと油圧系統に圧力をかけることができません。
ハイブリッド車は絶対にブレーキオイルを抜かないでください。
まとめ
ブレーキオイル交換を記事にさせていたきました。
ブレーキオイルはエンジンオイルなどのように抜いて入れるだけという作業ではありません。
意外と時間を使って、慣れが必要な作業です。
やっていることは簡単な作業ですが、作業ミスは重大な事故につながります。
決して安易に作業はしないようにしてください。
ただ、ブレーキを踏むのは誰でもできる作業ですから、手伝ってあげるとメカは泣いて喜ぶと思います(笑)
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