自分史上最強の接着剤『メタルロック』をご紹介します。
この記事はカーボンの修理としていますが、強度を保証できるものではありません。
カーボン製品の補修は記事のような補修方法ではなく繊維を樹脂で固める方法が正しい修理です。
「ステムが割れたっ!」メタルロックでカーボン補修
このステムは 3T ARX LTD でカーボンでできています。
実は真贋が不明で、たぶんですがコピー品だと思います。
正規のARX LTD は【ARX-LTD】と ハイフン が入ってるはずです。
高級『カーボンステム』が割れるということは無いと思いますが、私と同じように衝撃で割れたという話も聞くのでカーボン製品を使う場合の判断はご自身で行ってください。
瞬間的に受ける衝撃にはめっぽう弱いのがカーボンです。
ちなみにですが、カーボンステムで軽量化は都市伝説です。
軽くて確実な強度なのはアルミステムです。
割れた経緯を説明します
ある峠を下ってる最中に、路面の穴に気が付かずに前輪を落とした衝撃で割れました。
下りなので速度もそれなりに出ていて、ブレーキを確実にかけるために下ハンドルを持ってハンドルに少し体重が乗ってる状況でした。
タイヤやホイールにダメージはなく、落とした瞬間に『パキッ』って音がしたので、どこかにダメージはあるだろうとは感じてました。
アルミハンドル、アルミフレームだったのでダメージはホイールかステムだろうと・・・。
この割れた状態でもハンドル位置は動いていないので運よく落車などはなく、それ以降も何も影響なく走っていました。
はじめはFRPで修理してみた
FRP修理に必要な材料
- FRP繊維シート
- ポリエステル樹脂
- 硬化剤
すべてホームセンターでそろう材料のこの3点です。
FRPの修理は苦手ではなく、自動車のエアロパーツなどよくやってたので材料もすべて持っています。
カーボンとFRPは繊維は違いますが同じような方法で作られてるので、FRP補修で修理しています。
FRP補修の方法
ポリエステル樹脂と硬化剤を適量で混合してFRP繊維を浸し貼り付けていきます。
ポリエステル樹脂と硬化剤の混合比は私の使ったものは10:1でしたが、メーカーによって違うかもしれませんのでメーカー指示に従ってください。
FRPなど(カーボンも同じ)の補修は、割れてる部分だけではなく割れた部分以外の広範囲を補修します。
クラック(亀裂)の上から補修しても亀裂の内部まで樹脂が入り込まないので亀裂全体を完全に露出させます。
亀裂部分は削ってしまいます。
これをやらないと整形はできても強度が出ません。
今回の場合、クラックがあまりに小さいのでFRP繊維を内部に入れることができずに樹脂だけを流し込みました。
クラック部分の裏側はFRP繊維を樹脂で張り付けてあります。
この部分も塗装を削り元の繊維を露出させてFRPを貼ることがポイントです。
元の繊維や樹脂に新しい樹脂をしみこませることによって強度を出します。
硬化すれば整形して完成です。
樹脂補修の難しさ
樹脂補修はいかにポリエステル樹脂を対象物にしみこませて、母材と一体化させ強度を出すという部分が難しいです。
自動車のエアロパーツ以外ではジェットスキーの船体などを修理したことがありますが、強度を出すためにはかなりの広範囲にFRP繊維を貼り付ける必要があります。
ラックの場合は、クラック部分は大きく削り取って、イチから作り上げることが正しい修理方法です。
このステムをカーボン繊維などを使って補修するとなれば、クラックの周りを2㎝四方削り取って作り直せばきちんとした強度が出ると思います。
そこまでやる程の思い入れもないので上記の修理方法で直して放置していました。
FRPやCFRP(カーボン)を修理すると、修理箇所の強度は格段に上がってしまいます。
記事に書いたように、広範囲にわたって補修するのでその部分の素材の厚みが厚くなるためです。
フレーム修理の場合、フロント三角(トップ・ダウン・シートチューブ)はそれぞれ1本の構成ですが、シート・チェーンステーは片側を修理すれば左右で強度が変わります。
最強の接着剤【メタルロック】で修理してやる!
メタルロックは金属を接着するにはかなりの接着強度があります。
強度を確かめるためにアルミ板を接着したことがありますが、接着部分が剥がれることなく接着部分以外がちぎれました。
パッケージにあるように炭素繊維にも使えるようなので、今回はFRPで補修したカーボンステムをメタルロックでやり直すことにしました。
メタルロックとは
セメダイン株式会社
『金属同士の高強度接着ならメタルロック!
ネジ・リベット・溶接に代わる構造物接合に』
特徴
チタン・ステンレス・アルミニウム・鉄・銅・真鍮・亜鉛メッキ鋼などの金属、炭素繊維(CFRP)によく接着します。
CFRPはカーボン樹脂のことです。
最近の自転車での使用用途は多いですね。
ちょっとした傷ならメタルロックで補修しちゃいましょう。
チェーン落ちで傷ついてしまったチェーンステーです。
繊維の深くまでのダメージは無く、塗装が剥げて繊維表面を少し削っています。
この程度ならメタルロックでじゅうぶん補修はできます。
繊維がむき出しになったままだと水分を吸ってしまうのでよくありません。
塗装より接着剤で固めたほうが効果が高いので、同じようになってる方はメタルロックを自信をもってお勧めします。
カーボン製品におけるメタルロック接着強度
画像のパイプは切り取ったカーボンコラムです。
カーボンの接着強度を実証するために2本を接着しました。
私の力で接着部分を折ることはできない接着強度です。
もちろんカーボンコラムとして継ぎ足して使うことはできませんが。
割れたステムを再補修する
FRP繊維とポリエステル樹脂で補修したカーボンステムを再補修します。
ポリエステル樹脂は接着剤ではなく繊維を固めるためのものなのでクラックに流し込んだだ部分の強度には不安があります。
そこでメタルロックを流し込んで【接着】すれば使用強度まで行けるんじゃないだろうかというのが今回の狙いです。
まずは、ポリエステル樹脂を流し込んだ部分を削り落とします。
強度を出すために亀裂より広範囲に U字状 に削ります。
適当なパイプ(今回はカーボンコラムを使用)を使って、メタルロックでは接着できないビニールシートを接着部分にあてて余計な部分に流れないようにします。
これをやらないとコラムごと接着してしまいます。
メタルロックは2液性なので、A剤とB剤を同量よく混ぜ合わせて補修部分に盛り付けます。
硬化すれば出来上がり。
通常は1時間で使用強度になるらしいですが、今回はパテのような使い方をしてるのでそれ以上の十分な時間を置きます。
今回は補修のみの記事ですが、硬化後に使用してみてその結果を記事にてご紹介したいと思います。
メタルロックの強度に私は不安はないですが、ステムのような力のかかる部分に使えるのか安全に注意しながら実証していきます。
肉盛りで修理するにはメタルロックより『J-Bウエルド 』の方がいいと思います。
バイクの燃料タンク補修などにも使えて、さらにねじを切ることもできるほど強力です。
残念ながらダメだった
完全硬化したのでハンドルを取り付けてみた。
結果、ハンドルを締めつける時にステム側が少し変形するらしく接着剤のメタルロックを剥がしてしまった。
接着力 < ステムの変形です。
諦めない! 次の手を考える
メタルロックの接着力は高いが、変形に対応できるほどの柔軟性が無いのが剥がれた原因だと思うので、ガラス繊維を使って広範囲に張り付けてみることにした。
広範囲を削りガラス繊維をメタルロックで貼り付けました。
もちろん裏側のFRPも剥がして同じようにメタルロックでガラス繊維を貼り付けて補強しています。
ガラス繊維が力を分散してくれればハンドルの締め付けにも耐えてくれる気がするのですが・・・。
結果はまた後ほど。
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